「マッドマックス:フュリオサ」(2024)

 

待望のフュリオサ前日譚をグランドシネマサンシャイン池袋のIMAXレーザーGT字幕版で観てきました。

 

 

監督はジョージ・ミラー。予告編はコチラ

 

度重なる戦争で荒廃したオーストラリアのど真ん中あたりで、奇跡的に自然を保っている”緑の地”が存在しています。生き残った人たちで形成されたコミュニティで生まれ育った少女のフュリオサ(アリーラ・ブラウン)が、妹のヴァルキリーと野生の果物を獲って遊んでいました。あまり近寄ってはいけない場所らしく、勝手に侵入してきたバイカー集団が森でウロチョロしてるのを発見したフュリオサ。好奇心旺盛な彼女はヴァルキリーを避難させて、よせばいいのにおっさんたちにコッソリ近づいてバイクにイタズラをしていると、見つかって拉致されます。こりゃ大変だというんで、バイク集団の後を追ったのが母メリー"鉄馬の女"といわれる女戦士の一員なので、とても強い美人さんです。あと一歩のところでバイク集団のアジトに逃げ込まれて万事休すと思ったところ、果敢に乗り込んでフュリオサの奪還に成功。しかし、獲物を奪われたおっさんたちが黙っていません。バイク集団を束ねるボスのディメンタス(クリス・ヘムズワース)の号令の下、追われたメリーとフュリオサは捕獲されます。

 

緑の地の在処を吐かない母ちゃんは拷問されて死亡。フュリオサはディメンタスのペットのように飼われる生活が始まります。やがて、ディメンタスがシタデルと呼ばれる砦の存在を知ります。水や食べ物が豊富にある土地を奪うのは俺様だとケンカを売りに行くものの、待ち構えていたのは独裁者イモータン・ジョー(ラッキー・ヒューム)。彼のためなら死も厭わないウォー・ボーイズの剣幕にビビッてひとまず退散します。しかし、彼らの第二拠点ガスタウンを占領したディメンタスは、ジョーと休戦協定を結んでしばらくは小康状態を続けます。その際の貢ぎ物の一つとしてフュリオサを献上。健康体の彼女を嫁の一人にと思うジョーの意に反して行方をくらましたフュリオサは、別人のフリをしてジョーの家来になって雌伏の時を過ごします。そして十数年後、一家来から警護隊長にまで出世したフュリオサ(アニャ・テイラー=ジョイ)は、いまだにジョーと勢力争いを続けているディメンタスにまた痛めつけられたりしながら、ようやく復讐の機会を得て・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Furiosa: A Mad Max Saga」。フュリオサがシャリーズ・セロンからアニャ・テイラー=ジョイに代わって、「怒りのデス・ロード」に至るまでの物語を描いたスピンオフ。イモータン・ジョーに攫われてからずっと復讐の機会を待っていたのかと思ったら、フュリオサを誘拐したのは別の悪党で、いったんジョーに売り飛ばされて、こっそりジョーの部下になりすまして、ようやく大切な人を殺した敵の復讐を果たす展開になっていました。改めて考えると、豊かな環境で健康に育ったフュリオサはかなり恵まれた立場なわけで、彼女の不遇にバリバリ共感する気持ちが湧きづらかった点はあります。殺るか殺られるかの世界で容赦なく殺る方を選択している悪党にも共感できませんが、バカなバイクに乗るクリス・ヘムズワースは小ズルさがあって、絶対的な悪でもないため、どこか憎めないところがあります。いきなり騒動に巻き込まれたマックスの視点で追跡劇を傍観するように観ることができた前作の方が、いろんなキャラを一歩引いて楽しめる仕様になっていたのかもしれません。

 

直接的な残虐シーンは控えていて、ジョーとディメンタスの全面戦争もあっさりとした描写だったのは少し拍子抜け。フュリオサがどこで左腕を失うかというのがやはり見どころで、その見せ方はバシッと決まっていました。パラシュート付きバイクのギミックは最高です。アニャ・テイラー=ジョイの目力の強さはシャーリーズ・セロンと互角で、健闘していました。彼女が登場する上映1時間後まで場を持たせている少女役も好演。フューリーロードの危険な運転を担って、フュリオサのメンターとなるジャック警護隊長(トム・パーク)が最も美味しい役どころで、こんな世界にも頼れる上司みたいな人はいるんだと思いました。ラストは「怒りのデス・ロード」の5人の妻を脱出させる準備をするシーンで終わるので、そのまま前作に繋がっていく構成になっていて、立ちションをしているマックスの後ろ姿が一瞬出てくるサービスショットもあり。あのギタリストが映るのも嬉しいサービス。ただ、総合的なオーラではシャーリーズ・セロンに分があって、疾走し続ける面白さの面でも前作の方がやっぱり凄いなと思わせる所感でございました。