「哀しい気分でジョーク」(1985)

 

ビートたけし主演のお涙頂戴映画をU-NEXTで久々に観ました。

 

 

監督は瀬川昌治。予告編はコチラ

 

テレビの人気コメディアン五十嵐洋(ビートたけし)。妻とは別れていて、高級マンションで小学生の息子健(川辺太一朗)二人暮らし。といっても、ほとんど息子はほったらかしのままなのに、自分でテキパキと家事もこなしている賢い男の子です。マネージャーの善平(柳沢慎吾)がちょくちょく顔を出して、独りぼっちの健の面倒を見ているようです。ラジオ番組のパートナー悠子(中井貴恵)とはまだプラトニックな関係ですが、周囲の関係者はデキてるのではと噂しています。ある日、目まいで倒れる健を見た洋。念のために病院で検査すると、いきなり脳腫瘍で余命数ヶ月の命だと聞いてビックリ。信じられない洋は数か所の病院で再検査を繰り返すも、診断結果は同じ。これまで遊び惚けていた洋は、急に仕事の量を減らして、家で健と一緒に過ごす時間を増やしていきます。飲み歩かなくなった洋の様子が気になった悠子は、洋の家に押しかけて女房気取りで家事の切り盛りをしはじめます。

 

稼ぎ手が洋しかいないプロダクションの社長(石倉三郎)は、ギャラを前借りしている洋を支えることはこれ以上できないと泣きついてきます。息子と一緒に出演した親子合唱コンクールの仕事でも失態を演じて、仕事はますます減っていくばかり。高級外車を売って、高級マンションを売るしかないところまで追い詰められます。しばらくして健の病状を知った悠子は自分の貯金100万円を洋に託します。そのお金も美人局(木内みどり)に騙し取られる始末。賞品の海外旅行目当てで健と一緒に出演したクイズ番組でも優勝できず、オーストラリアに行けずにガックリする健。それでも、洋は健のために自費でオーストラリアに出発。健がオーストラリアに行きたかったのは、現地で暮らしている母(大谷直子)と会いたいから。しかし、再婚して新しい人生を送ろうとしていた母には会えずじまい。失意のまま帰国した健の寿命は刻一刻と尽きようとしていて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1985年4月27日。同時上映は「時代屋の女房2」コアラやエリマキトカゲがブームになっていた1984年秋に、それらの母国オーストラリアで撮影。1985年に阪神タイガースが日本一になるとはまだ思っていなかった頃で、最初の絶頂期を迎えていたビートたけしが、一人息子の病気を治すために駆けずり回るでもなく、ちょっと一緒に遊ぶ時間を作れたぐらいで、あとは死を待つのみの父親を切なく演じった物語。金曜ロードショーで観た記憶あり。ド直球の難病モノで、人気コメディアンのたけしが演じている点以外の魅力はありません。カッコ良さやカリスマ性に磨きがかかり始める直前の時期で、狂気成分を封印した滑稽でお茶目なビートたけしが拝めます。TVドラマだと「学問ノススメ」あたりの雰囲気に似ているかも。

 

監督の瀬川昌治は、渥美清、谷啓、フランキー堺、ドリフ、タモリといった東京の喜劇人のプログラムピクチャーを何本も手がけてる大ベテランなので、ベタなペーソスを何の気負いもなくサラっと演出しています。改めて観ると、出てくる女性たち、というか、登場人物全員のキャラ造型がザツすぎる印象。当時やけに強く印象に残っていた『グリーン・グリーン』の歌詞が、父子の物語にうっすらとリンクしています。健の病気を診断するお医者さんが南廣草薙幸二郎笹野高史と異様に渋い人選。大谷直子の再婚相手は、実生活での夫だった清水紘治。あと、(ファンクラブ会員を集めて撮影したと思われる)コンサート場面などには、若きたけし軍団の面々もあります。「ガヒョーン」が持ちネタの売れっ子コメディアン役で原田大二郎、健の担任教師役で菅井きんも出演。タイトルと同名の主題歌も、レーザーディスクも懐かしいです。