「戦場のメリークリスマス」(1983)

 

大島渚監督による話題作をU-NEXTで久々に観ました。

 

 

デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし共演の戦争映画。予告編はコチラ

 

4/16から4K修復版が公開されます。不思議な魅力のある映画。その理由はやはりキャスティングでしょう。Wikipediaによると、セリアズ役にロバート・レッドフォードやニコラス・ケイジ、ヨノイ大尉役に沢田研二、三浦友和、ハラ軍曹役に緒形拳、勝新太郎などが候補に挙がっていたようです。デヴィッド・ボウイはまだしも、ビートたけしと坂本龍一のその後の飛躍を考えると、この三人の共演は奇跡的な組み合わせといえます。職業俳優の中に異業種の才能を放り込むと、文字通り、異彩を放つ効果が出ることはありますが、一人じゃなくて三人の異彩がぶつかり合っているのが画面に出ています。この特番映像も面白かったですよ。

 

いきなり有名なあのテーマソングで一発かました後、オランダ人俘虜を犯した朝鮮人軍属カネモト(ジョニー大倉)のエピソードから話は始まります。1942年、日本統治下のジャワ島の日本軍俘虜収容所が舞台。収容所の現場監督的ポジションの粗暴なハラ軍曹(ビートたけし)と日本語を話せる英国陸軍中佐の俘虜ロレンス(トム・コンティ)との奇妙な友情が描かれます。そして、収容所所長でエキセントリックな陸軍大尉ヨノイ(坂本龍一)が登場。さらに、新たな俘虜となった陸軍少佐ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)がやって来て、彼の反抗的な性格とカリスマ性により、収容所に大きな波風が立っていきます。東洋人と西洋人とで全く違う倫理観、また味方同士でも個々に違う人生観、価値観がひしめき合う中で、多くの衝突、共感、死を経て、次第に終戦が近づいてきて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

ローレンス・ヴァン・デル・ポルトの『影の獄にて』が原作。作者自身の俘虜体験がベースになっています。3部構成となってる小説から、暴力的なハラ軍曹と通訳として日本軍との調整役を務めるロレンスとの対立・相互理解を描いた第1部と、セリアズとヨノイとの運命的な出会い、セリアズの弟とのエピソードを描いた第2部を映像化しているのが今作のようです。テーマソングと同じくらい有名なラストシーンも原作の第1部に書かれている内容とのこと。ロレンスとハラ、セリアズとヨノイ、戦時中の敵同士じゃなかったら、友情で繋がり合えたかもしれない者同士の歪んだ人間関係が映画内の物語のベースになっています。2時間弱の映画だとどうしてもエピソードを駆け足で紹介していかざるを得ないので、印象的な出来事や感情が昂った瞬間をダイジェストでまとめた内容になっているのかもしれません。

 

全体のバランサー的存在のトム・コンティは半分以上日本語のセリフをしゃべって最もコンスタントにいい芝居をしていて、実質的に映画を牽引しているのですが、瞬発力と華のあるボウイ、教授、たけしの3人が美味しいところを全部かっさらっていきます。ストーリーに感動したという感じではなく、たまたま集まった個性がその瞬間に発した熱量をギュッと詰め込んで出来上がった何かを浴びたという映画体験なのかなと思います。あと、軍属役のジョニー大倉が熱演してたり、「どうかヨロシク」といつもの感じでヨノイに語りかける内田裕也がいたり、終盤でちょっとだけ三上博史が出ていたこともメモしておきます。