「夜叉」(1985)

 

シブイ高倉健と艶っぽい田中裕子と危ないビートたけしの映画をU-NEXTで久々に観た。

 

 

田中邦衛もシャブに手を出してゴキゲンになります。監督は降旗康男。予告編はコチラ

 

日本海に面する小さな港町の漁師修治(高倉健)は、かつて大阪ミナミで"夜叉の修治"という異名で鳴らしたヤクザでした。今は、妻(いしだあゆみ)や子供たちと一緒に静かな生活を送っています。ある日、大阪ミナミから螢子(田中裕子)という子連れの女が街に流れ着いて『螢』という飲み屋を開きます。美しい螢子目当てで漁師たちが集まって店は大賑わい。やがて、矢島(ビートたけし)という螢子のヒモでシャブ中の男もやって来て、気のいい漁師たちを賭け麻雀&シャブ漬けの道に誘います。修治の親友・啓太(田中邦衛)もシャブの餌食になってしまいます。

 

状況を察した修治は事態を収めようと矢島と取っ組み合いの喧嘩となり、シャブが切れて暴れ回る矢島の包丁が修治のシャツを斬り裂くと、漁師仲間に隠し続けた背中の夜叉の刺青が晒されます。修治の過去は街中に知れ渡り、家族は白い目で見られることに。その後、行方をくらます矢島。客足が途絶えて孤独になった螢子と、彼女に自分と通ずるものを感じた修治はいつしか惹かれ合っていき、結ばれます。しかし、矢島がシャブの供給源の大阪ミナミのヤクザに監禁されていることを知った螢子は、矢島のことが忘れないようで修治に助けを請います。修治は妻の制止を振り切って、15年ぶりにミナミに単身で乗り込んで、ヤクザ相手に矢島を奪還しようとするのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

高倉健が毎度のように全編に渡ってカッコイイのは当然なのですが、それ以上に田中裕子のイイ女オーラが出まくっていて、高倉健を凌駕する魅力を発散しています。脇も充実していて、生活感がありつつもうっすらと色気のあるいしだあゆみも良いし、シャブが切れて包丁片手に暴れまくるビートたけしも凄みがあります。地元の漁師にしか見えない田中邦衛もダメなオヤジを好演していて、あき竹城に怒られています。あと、いしだあゆみの母親役には乙羽信子。奇しくも、田中裕子と乙羽信子のWおしんの共演。終盤では「おしん」(1983)でナレーターをやっていた奈良岡朋子も修治のミナミ時代の姐さん役で登場。橋田寿賀子のご冥福をお祈りいたします。

 

木村大作の撮影による福井の漁師町の雪景色は素晴らしいです。飲み屋にたたずむ田中裕子の場面は当時イメージキャラクターを務めていたサントリーのCMみたい。サントリーOLDもしっかり映っています。あと、飲み屋の有線で五木ひろしの歌が流れるシーンもありました。五木ひろしはロケ地の美浜町の出身。ちょくちょく挿入される回想シーンはちょっとダサいかも。健さんがミナミに乗り込んでからのシーンも少しチープです。映画全体としてはもっさりとした出来に思えます。雪景色と、海と、駅と、居酒屋と、長ドスと、健さん。そして、脇に豪華な俳優陣と、小林稔侍と、田中邦衛。それだけで十分です。