「アンジェラ・マオの女活殺拳」(1972)

 

アンジェラ・マオが躍動するアクション映画を観ました。初見。

 

 

監督はファン・フェン。英語版予告編はコチラ

 

大日本帝国占領下のソウルの合気道飛鷹総館で修行を積む中国人ユイイン(アンジェラ・マオ)、チャン(カーター・ウォン)、ファン(サモ・ハン・キンポー)の三人。ある日、威張り散らす日本人に挑発されて少々痛めつけたもんですから、怒りを買ってしまいます。身を案じた師匠(チ・ハンジェ)は、中国へ戻って道場を開くことを提案。合気道の精神である"忍"を忠実に守るよう誓わせて送り出します。さっそく、三人は中国の滄州で飛鷹総館を開くも、ここでも悪徳日本人豊田率いる黒熊武館が幅を利かしていました。住民たちに嫌がらせをする門下生の振舞いにガマンできなくなったファンが一戦交えて、やっつけてしまいます。豊田館長は激怒して、師範ティエン(パイ・イン)と参謀ジャン(ウェイ・ピンアオ)が飛鷹総館に出向いて挑発。

 

その後、和解にやって来たチャン右腕をへし折られて瀕死の状態で戻ってきます。すると、事態を収拾させたいユイインが黒熊武館に直談判合気道の師範を倒したユイインを見て、豊田館長は道場を潰すのではなく、自分たちの配下に置こうと画策。攻撃の手を緩めない豊田館長は、ほとぼりが冷めるまで潜伏していたファンの隠れ家に手下たちを送って惨殺。道場まで乗っ取られてしまったユイインはさすがに怒り心頭となって、手下たちを撲殺。ここでソウルから兄弟子ピン(ウォン・インシク)がやって来ます。ソウルでも日本人の横暴で多くの人々が殺されて、師匠も捕まってしまったと知らされます。さらにはチャンも路上で襲撃されて死亡。ユイインは兄弟子ピンと黒熊武館へ殴り込みに行くのであったが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「合氣道」。英題は「Lady Kung Fu」。主演はアンジェラ・マオ「燃えよドラゴン」のブルース・リーの妹役での短い出演シーンがとても印象的な女優さんです。手足の短さによる見映えの貧しさが若干あるものの、キレのある連続攻撃はなかなかのもの。師範を倒してボス豪快に投げ飛ばしてジ・エンド。中国でも、朝鮮でも、民間人を痛めつけてるのは日本人だという設定に心を痛めつつ、彼女のいつでも真摯な顔つきが応援心をくすぐります。ストーリーは「ドラゴン怒りの鉄拳」と似ていて、悪党のイジメに耐えに耐えて、最後に怒りを爆発させる点は任侠映画のフォーマットにも近いです。なお、日本人ボスの黒熊武館長のキャラは「緋牡丹博徒」シリーズの熊虎親分(若山富三郎)の影響があるような気がします。違うかも。

 

脇役陣がなにげに充実。キン・フー映画でもおなじみのパイ・インが黒熊武館の師範として立ちはだかります。ブルース・リャンも黒熊武館の下っ端役で登場。町娘に絡んでオッパイを想像して胸を揉もうとしたところをサモハンに制止されてケンカが勃発。後日、露天商のおばちゃん熱湯を浴びせる非道ぶりにキレたサモハンにとうとう殺されます。門下生役には若き日のジャッキー・チェンユン・ピョウの顔ぶれもあり。「少林寺への道」の印象が強いカーター・ウォンは本作がデビュー作だとか。クライマックスに同行するウォン・インシク連続蹴りもさすがの一言。そして、悪人の虎の威を借りるザコキャラを演じさせたら天下一品のウェイ・ピンアオ。ピンチに陥ると途端に情けなくなる顔芸がGOOD。小気味良いアクションと人物配置を計算したカメラアングルによる演出が光る一品でございました。