「レッド・ドラゴン 新・怒りの鉄拳」(1976)

 

ジャッキー・チェンの本格的主演作をU-NEXTで観ました。

 

 

監督はロー・ウェイ。予告編はコチラ

 

陳真(ブルース・リー)の死後、上海から台湾に逃げ込んで祖父の元に身を寄せたレイ(ノラ・ミャオ)をはじめとする精武門の御一行。レイの実家は台湾でも名高い武術の家。80才になる祖父と実力者のハン先生(ハン・インチェ)が快く出迎えます。しかし、台湾でも悪徳日本人が我が物顔で土地を支配しようとしています。武道界でもいくつかの流派があり、お互いの縄張りを尊重することでなんとか均衡を保ってきたわけですが、日本人武道家の岡村(チェン・シン)がボスを務める最大勢力の大和門が全流派を自分の傘下に入れようとして、いろいろと嫌がらせをしています。台湾人の誕生日会で"関羽"の出し物を見て、"宮本武蔵"の方が強いと威張り散らすような迷惑野郎たちです。

 

そんな中、地元の孤児でちっぽけなコソ泥をしてる若者ロン(ジャッキー・チェン)が、精武門が秘蔵していたヌンチャクを盗んだことで奇妙な縁が生まれます。大和門に媚びへつらう太陽門という中国人道場に弟子入りを強要されて断固拒否、ボコボコにされたロンは、倒れていたところをレイたちに助けられて治療を受けます。回復後に精武門入りを進められて一度は拒否したロン。しかし、大和門のあまりの横暴を見て正義心に火が付いたロンは精武門に弟子入り。どうやら高素質だったようでメキメキと上達、道場のトップにまで上り詰めます。そして、亡き陳真が編み出したという奥義"迷躁拳"を授けられたロン。ある日、全流派の幹部を呼び出したある会合で、全ての流派を統一して大和門にすると突然言い出した岡村。逆らう者たち全員を岡村と弟子達が血祭りに上げます。中国武術陣営の最後の望みはロンだけとなって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「新精武門」。「ドラゴン怒りの鉄拳(精武門)」の正統な続編として作られました。日本人の理不尽な圧力に耐えかねた主人公が最後に怒りの鉄拳を炸裂させる展開は前作を踏襲。軍隊が銃で待ち構えるラストも同じで、衝撃的な終わり方は前作以上。観たのは香港公開版(115分)より短い82分バージョン。香港公開版には、大和門に壊された精武門の看板を直してロンが道場に勇ましく持ち帰って来る姿に、かつての陳真の面影を見たレイといった場面があります。まさしく、ブルース・リーの後継者としてジャッキーが指名された瞬間でありますが、本作自体が成功しなかったため、ジャッキーがスターダムを駆け上がるのはまだ先の話。

 

ジャッキー・チェンは芸名を"成龍"に変えて再デビュー。まだ一重まぶたの頃で、ルックス的には華やかさを感じません。ただ、おっちょこちょいな一面も描いていて、のちのコミカルなジャッキー映画に繋がるところもあり。ロンは孤児ですが、実際は水商売をしている生みの母親がいて、自分が母親であることを隠してロンの成長をそばで見守っているという、特になくてもいい設定もあります。結局、自分の母親の存在を知らないまま死んでいく悲しい結末を迎えます。三節棍を駆使するジャッキー、三節棍の棒の一つが取れてヌンチャクのように使うジャッキーが観られたのは面白い一方で、空手の達人である岡村の娘と真剣勝負して殺してしまうジャッキー、最後は日本刀を使うジャッキーというのはレアで、珍品の1本といえる作品だと思いました。