「ドラゴン怒りの鉄拳」(1972)

 

Amazonプライムで、ブルース・リーを久々に観ました。

 

 

昔のTV放映で観て以来。リマスタリングされた広東語によるノーカット版映像でした。劇場公開時にご覧になった人は英語版吹替えのカット版の方に思い入れがあるのかと思います。今月から復活祭をやってますね。とにかく、チャック・ノリスすら敵わないブルース・リーの存在感だけで、ソーラン節に乗って踊るだらしない体つきの日本人ストリッパー等のダメな日本描写への嫌悪感もどこかに吹き飛んでしまいます。

 

20世紀初頭の上海租界を舞台にして、日本人による執拗な中国人いじめに堪えかねた男が怒りの鉄拳をお見舞いするお話。実在の中国武術界の人物(霍元甲)を日本人が暗殺、その復讐を誓う愛弟子を演じるのがブルース・リー。一人だけ真っ白の衣装で登場するところから図抜けたスター・オーラを発しまくりです。ブルース・リーの造形が、頭のてっぺんからつま先にいたるまで美しく、弱すぎる相手を完膚なきまでになぎ倒してくれます。犬らしき動物の丸焼きを頬張ったり、可憐なノラ・ミャオと初々しいキスをしたり、電話修理屋や新聞売りに変装したり、サービスシーンも満載。記念すべきは、怪鳥音とヌンチャクが初披露されていること。この予告編の3分26秒くらいにある、手の動きのシーンも効果的です。有名なラストシーンも鮮烈。

 

監督は、自身も警察署長役で出ているロー・ウェイ。ゆるーい演出でどうしようもないですが、結果的にブルース・リーの躍動感が引き立っています。ボスキャラ役の日本人は当時、香港映画界と親交のあった勝新太郎から派遣された橋本力が演じています。元プロ野球選手だったことは知りませんでした。また、武道場の門下生の一人として若き日のジャッキー・チェンの姿も拝めます。クライマックスの敵側のスタントシーンもジャッキーが務めているそうです。

 

若くして亡くなったことで伝説となり、商売上、神格化されすぎの面はありますが、ブルース・リーの遺した映画は、同じアジア人として、世代を超えていつまでも観続けるべき作品だと思います。アメリカでは、前作の「ドラゴン危機一発」(1971)を「Fist of fury」で公開してしまったため、「Chinese connection」のタイトルで公開したとのこと。香港以外ではブルース・リーの死後に公開されたものだと思っていましたが、IMDBで見ると、アメリカ、イタリア、オランダ、西ドイツ、オーストラリア、カナダは亡くなる前の公開だったんですね。イギリスはブルース・リーが死んだ日(1973.7.20)の公開となってました。※英語版Wikiだと、1973.7.19公開。

 

あとは、日本側の道場に掲げられてる門下生の立て札に、室田日出男、梅宮辰夫、神田隆、天尾完次などの名前を発見。東映のポスターから適当に名前を拾ってきたのでしょうか。