「アメリカン・グラフィティ」(1973)

 

カリフォルニアの一夜を描いた青春映画をU-NEXTで観ました。

 

 

監督・脚本はジョージ・ルーカス。予告編はコチラ

 

1962年9月初頭のカリフォルニア。ラジオからはウルフマン・ジャックのDJ番組が流れ始める夕方の時間帯。若者たちの溜まり場「メルズ・ドライブ・イン」には、カート(リチャード・ドレイファス)スティーブ(ロン・ハワード)、1つ年下のテリー(チャールズ・マーティン・スミス)が訪れます。カートとスティーブにとっては大学進学前の最後の夜。なのに、カートはこの町を去ることをためらっている様子。スティーブのカノジョはカートの妹のローリー(シンディ・ウィリアムズ)で、最後の夜をエンジョイする気マンマン。スピード自慢で名を馳せているジョン(ポール・ル・マット)のように高校を卒業して田舎でよろしくやってる連中もドライブ・インにやって来ます。今夜も彼に勝負を挑んで待っている野郎がいるという噂でもちきり。スティーブから1年の間だけ愛車を預かることになったテリーは大喜びで繁華街に繰り出します

ダンスパーティーに向かう途中で理想のブロンド美女を見かけたカートはそのことで頭が一杯でしたが、路上で地元不良集団「ファラオ団」に絡まれて、彼らのイタズラに付き合わされる羽目に。一方のスティーブは、明日にはいなくなってしまうのが耐えられないローリーとケンカしてはまた仲直りを繰り返します。ジョンはナンパ相手に13歳のキャロル(マッケンジー・フィリップス)を押し付けられて、車に乗り込んだませたガキの相手をさせられる始末。テリーはデビー(キャンディ・クラーク)という美女をナンパでゲット。見栄を張ってムリな言動をしてるうちに車を盗難されてしまいます。その後、カートはラジオ局に出向いて美女へのメッセージをリクエスト。ウルフマン・ジャックからは街を出ろとアドバイスされます。夜が明ける頃、ジョンはボブ(ハリソン・フォード)という挑戦者とチキンレースをすることになって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「American Graffiti」。直訳すると"アメリカの落書き"という意味ですが、耳慣れないフレーズを押し通して流行させたセンスが秀逸。王道ど真ん中で勝負した「Star Wars」というネーミングも含めて、ルーカスの才気を感じます。ベトナム戦争などの暗い空気がなかった1962年のアメリカを舞台に、4人の青年の一夜の出来事をごちゃまぜにスケッチしていく内容。老朽化したハリウッドのスタジオ主導では作れない手触りがあり、リアルタイムに体感した世代が当時の空気感そのものを主役にして、想い出補正された青春群像を上手に綴っています。違う時代に生きる知らない土地の若者のなんてことのない1日でしかないのに、オールディーズに乗せてエピソードをテンポ良く繋いで紹介されると、自分が体験した青春であったかのような気分にさせてくれるマジックがあります。しかし、若者は一晩だけでいろんなことが起きるもんですね。今の私なんか、飲み食いして寝るだけで時間が過ぎてしまいます。。。。

 

大学へ行くのを先延ばしにするかどうか。田舎の彼女と別れるかどうか。ナンパした女にイケてる奴だと思わせたい。最速のスピード野郎であり続けたい。たわいもない若者の悩みや願望の寄せ集めなところが良いです。映画内時間がウルフマン・ジャックの番組オンエア時間に設定されてる点も結び方もGOOD。ローラーガールのウェイトレスのインパクトも大。ロックンロールヴィンテージカー看板ファッションなど、文化風俗をパッケージングしたカタログ映像としても価値あり。映画館のボードに製作者のコッポラ監督作「ディメンシャ13」のタイトルがあったり、ジョンの車のナンバーが「THX-1138」のもじりだったりという小ネタ遊びもあり。製作費は80万ドル足らずで、興行収入は1億ドル超えの大ヒット。映画で描かれた一夜は、人生にまだ暗い影が落ちてない時期で、未来への光が見えるかどうかも分からない貴重な一瞬であり、そんな人生のマジックアワーというべきひと時を切り取った素敵な映画でございました。