「風花」(2001)

 

小泉今日子、浅野忠信共演のロードムービーを観ました。初見。

 

 

監督は本作が遺作となった相米慎二。予告編はコチラ

 

満開の桜の木の下で酔いから目覚めた文部省高級官僚の澤城廉司(浅野忠信)。隣にいる女の記憶が全くありません。泥酔してコンビニで万引きをした事が週刊誌ネタとなって、謹慎を命じられてムシャクシャして行ったピンサロで澤城についたピンサロ嬢レモン(小泉今日子)でした。酔っ払って自殺を口にした澤城に対して、だったら私が帰郷する北海道で自殺したらと言われて一緒にいたようですが、酔うと一切の記憶がなくなる性分のため、全く覚えていません。レモンとはいったん別れたものの、交際中の美樹(麻生久美子)にもフラれて、なんにもすることがない澤城は酒に酔ったままで空港に行ってレモンと再会すると、そのまま北海道に同行します。

 

現地に着いてレンタカーで一緒に旅することになった二人。夫(鶴見辰吾)が交通事故で死んでいた過去があり、借金返済のために娘を実家に預けたまま東京で働いていたレモンは5年ぶりに会いに行きますが、自分の子供として引き取りたい母親(香山美子)の反対に遭って会えずじまい。澤城も上長から電話があって解雇を通告されます。その後もすることもなく彷徨い続けて、また酔っ払った澤城が居酒屋で客に毒づいて殴られたりしながら、雪山の山荘にたどり着くと、レモンは仲良くなった団体客の友人に性のお仕事をしてくれと頼まれる夜を過ごします。未明に置き手紙を残して山荘を去ってしまったレモン。自殺したのではと慌てて雪山に探しに行った澤城ですが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は2001年1月27日。鳴海章の同名小説が原作。国家公務員と風俗嬢がアテもなくフラつく様子を描いたロードムービー北海道のどかな風景をそこそこ映しつつ、それぞれにふと自分の過去を回想しながら、二人のたわいのないやりとりがずっと交わされていって、終盤にそこそこの出来事が起きて一応の結末があるという内容。ケリー・ライカートの一連の映画の空気感と似てるかもと思いました。主人公二人が終始居心地悪くしている感じに浸れるかどうかで映画の感想が分かれるんじゃないでしょうか。個人的にはキョンキョンが好きなので、笑ったり愕然としたりいろんな表情を浮かべる小泉今日子くたびれた佇まいをじっくり捉えた映像を眺めているだけで十分満足できました。フォトジェニックなショット多々あり

 

性格の悪い公務員を演じる浅野忠信のグダグダしゃべりも徐々にクセになります。自分が死ぬつもりがレモンを助ける側に回る役どころ。最後は笑顔で別れて、レモンと娘との再会を遠くから見守って北海道を去っていきます。キョンキョンの代わりにと言わんばかりにお風呂で全裸になってる姿も披露。レモンが雪山を歩いて絶望したまま死んでしまっても画になっただろうし、本作のように澤城に助けてもらったことで心機一転して娘と一緒に故郷で暮らすことになる結びでもどっちでもよかったかも。他に、山荘のオーナー役で柄本明が出演。夜の宴会で座頭市を演じていました。あと、空港で偶然に会う芸能人役で椎名桔平、なぜかカエルの声役で笑福亭鶴瓶が特別出演。相米監督得意の長回しも、ゆったりと流れる映画のリズムにフィットした映画でございました。