「ウェンディ&ルーシー」(2008)

 

ミシェル・ウィリアムズ主演のインディーズ映画の佳作をU-NEXTで観ました。突然の地震にビックリ。

 

 

監督・脚本はケリー・ライカート。予告編はコチラ

 

放浪しながら、仕事を求めてさまようウェンディ(ミシェル・ウィリアムズ)。年はアラサーくらい。オンボロの愛車ホンダアコードで、愛犬ルーシーとの共同生活を続けている模様。現在地はオレゴン州ポートランドで、アラスカに北上して仕事に就こうと計画しています。彼女の素性は詳しく紹介されません。ある日、私有地の駐車場で車中泊をしていたウェンディが年老いた警備員注意されて車を移動しようとすると、故障してしまったようで動きません。なんとか公道まで移動させますが、問題は車の修理代。持ち金は500ドル余り。近所のスーパー自分とルーシーのための食品を万引きするも、一部始終を店員に見られていてしょっ引かれます。警察に連れて行かれて罰金を支払わされる羽目に。余計な出費で手痛いダメージを食らっただけでなく、スーパーに置いていったルーシーが行方不明になってしまいます。

 

唯一のパートナーを失って焦るウェンディ。方々を探してもなかなか見つかりません。有り金も底を尽きてきたので、公衆電話から姉に連絡してせびろうとするも、姉夫婦だってカツカツの生活であることを知ってるので断念。車の修理業者からはいろいろ直すと2,000ドルかかると言われてさらにショックを受けます。人気のない原っぱで野宿をすると、浮浪者に絡まれてコワイ思いをしたりもします。周囲の人たちの素っ気ない対応で、孤独感を募らせていくウェンディ。唯一、優しく手を差し伸べてくれたのは、前述した年老いた警備員。毎日同じ建物の前に立って警備している彼だけは、携帯電話を貸してくれたり、いろいろと親身になって話を聞いてくれたりします。やがて、ルーシーの居場所が分かって再会を果たすウェンディ。拾ってくれた一般家庭の人に飼われて幸せそうに暮らしているルーシーを見て、彼女が下した決断とは・・・というのが大まかなあらすじ。

 

ミニマルなロードムービーだった前2作以上にミニマルな本作。辿り着いた場所から次の場所へ動けずにあたふたしている一人の女性の数日間を追っただけのお話。絶望とまではいかなくても、どこか空虚感を抱いていている登場人物の心の揺れに寄り添いながら丁寧に描くタッチとリズムが絶妙。ウェンディ演じるミシェル・ウィリアムズたくましさと弱さが同居した眼差しが良いです。彼女の鼻歌によるBGMもGOOD。前作を観て感動した彼女が自ら監督に売り込んで、本作が実現したとのこと。「ノマドランド」(2020)におけるフランシス・マクドーマンドとクロエ・ジャオとの関係性に似ていますが、こちらの方が社会格差を声高に訴えるわけでもなく、押しつけがましくないところがあって好きです。ちなみに、監督と主演の組合せはこの後ももう3本作られています。前作に続いて出演したルーシーも可愛く、カンヌ国際映画祭でもパルム・ドッグ賞を受賞しています。