「ソナチネ」(1993)

 

先週、監督第4作を池袋の新文芸座で観て来ました。

 

 

監督・脚本は北野武。予告編はコチラ。淀川長治の解説はコチラ

 

東京の北島組傘下の村川組組長の村川(ビートたけし)北島組組長の北島(逗子とんぼ)幹部の高橋(矢島健一)に呼び出されて、沖縄で阿南組と抗争状態に入る中松組(北島組の友好組織)の助っ人を命令されます。激しい抗争にはならないと言われて、渋々沖縄に向かう村川。幹部の片桐(大杉漣)組員のケン(寺島進)等の手下(の一人に津田寛治がいました)を連れて沖縄に着くと中松組幹部の上地(渡辺哲)や組員の良二(勝村政信)たちと合流。すると、阿南組による事務所襲撃でいきなり複数の組員を失う羽目に。村川たちは市街の喧噪から離れるべく、片田舎にある中松組の隠れ家ヘ避難。することのない御一行は、ヒマを持て余してしょうがありません。たまたま知り合った幸(国舞亜矢)も交えて、毎日、砂浜子供じみた遊びに興じる日々続きます

 

やがて、北島組幹部の高橋が沖縄に来ていることを知ります。高橋に阿南組との手打ちと組の解散を強要されたと語る中松組組長。しばらくして、中松組は壊滅させられて、隠れ家に潜伏していた村川たちも何者か襲撃されます。このまま黙っているわけにいかない村川は生き残った組員を連れて、謎の殺し屋(南方英二)と共にいた高橋たちとの銃撃戦を制して、捕まえた高橋拷問して抗争の内幕を力づくで暴露させます。阿南組と手を組みたいために、邪魔な中松組を潰そうとしていたこと。ついでに村川組の縄張りを強奪するために、沖縄で村川を始末しようとしていたこと。全てを知った村川は、沖縄にやって来る北島組長を待ち受けて最終対決に挑むのであったが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1993年6月5日。テアトル新宿での公開時以来、ずっと観ておらず、もう一度スクリーンでということで、池袋の新文芸座に参上。35mmフィルムでの上映でした。そういえば、文芸座も「新文芸座」になってから初めて。で、30年ぶりに観た感想はというと、初見時ほどのインパクトはありませんでした。今回はストーリーを追う余裕もあったし、どこに衝撃を受けたのかを振り返りながら観ていたせいもあると思います。片田舎に潜伏して村川たちがダラダラと遊ぶ時間が想像以上に長かったことに改めてビックリ。このパートが物語のメインですね。ただただキレイなだけの沖縄の海や空をバックにして人間紙相撲落とし穴花火合戦フリスビーロシアンルーレットで戯れるシーンの中に、村川たちが乗っている車野原ただ走ってるだけ等の無益な時間帯もブレンドされています。"殺風景"を絶妙なバランスで忍ばせているところにたけし映画の魅力があります。

 

微妙な可笑しみを積み重ねる程度にユーモアが存在してる点も良く、それによって、唐突に繰り広げられるいくつかバイオレンスがより引き立っている印象。たけし軍団メンバーが主要登場人物だった「3-4x10月」と違うのは、渡辺哲のユーモラスな沖縄の踊りや、寺島進勝村政信の間に生まれていく友情、各所に配置された個性的な顔の数々など、プロの役者や渋い芸人の存在感で映像に厚みが出ているところ。久石譲のシンプルな劇伴も非常に効果的で、さらに当時ピークに達していたと思われるたけし自身の厭世感も乗っかっていて、映画の密度が濃くなってます。また、たけし映画の特徴の1つであるを使ったシーンも多く、特にマズルフラッシュ(閃光)がホテルに停められた車のボディに反射するクライマックスの銃撃戦がとてもCOOLでした。村川が最後に取る行動も車の中です。前作までにもあった不穏な間合いと唐突な暴力に、洗練された映像美も加わった傑作でした。あと、コッチよりコッチの方がエロく感じました。