「その男、凶暴につき」(1989)

 

ビートたけし主演のバイオレンス映画を某動画サイトで観ました。最近、邦画ばっかり観てます。

 

 

北野武の監督デビュー作。予告編はコチラ

 

浮浪者を襲った少年の自宅へ押し入って、暴行を加えて自白を強要して帰っていく一人の男。我妻(ビートたけし)平気で暴力をふるう捜査方法で、署内上層部でも問題視されている一匹狼の刑事。容疑者を車で轢き殺そうとする姿に、相棒になったばかりの新米刑事菊地(芦川誠)はビビり通し。そんなある日、麻薬売人の柄本(遠藤憲一)が惨殺された事件を追うと、裏の顔を持つ青年実業家の仁藤(岸部一徳)と子飼いの殺し屋清弘(白竜)の存在が浮かび上がります。と同時に、麻薬の出元は我妻の先輩である防犯課の岩城(平泉成)であることも判明。

 

事件との繋がりを消すため、犯罪に関わった人物は仁藤によって次々に殺されていき、岩城も自殺に見せかけて殺されます。ブチ切れた我妻は、清弘を不当逮捕で署内に連れ込んでボコボコにした挙句、発砲騒ぎ(銃殺未遂)を起こして警察をクビになります。清弘だって黙っておらず、部下に我妻の妹を拉致してヒドイ目に遭わせます。清弘本人は我妻を襲撃して殺す一歩手前まで行くも、我妻に逃げられてしまいます。すると、今度は我妻のターン。不法に拳銃を入手して、悪の元凶である仁藤の会社に出向いていきなり射殺。その足で清弘のアジトに向かって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1989年8月12日。英語版タイトルは「Violent Cop」。20年ぶりくらいに観直しました。本作は劇場公開では観ておらず、レンタルビデオで観た記憶があります。初見時には良さが分かってなかったですね。洗練された輝きがない分、原石ならではのギラツキが充満しています。その後、「3-4X10月」(1990)「ソナチネ」(1993)は映画館に観に行きましたが、後者は初見時から大好きで、前者は見直すたびに好きになる映画です。たけし映画は某動画サイトに他の作品もあるようなので、これから少しずつ観直していこうと思います。ソフト買って観ろよという話ですが。。。

 

冒頭からむき出しの暴力でガツンとかまされますが、それ以降もブラックな笑いをも含んだ暴力がどんどんエスカレート。歩く、走るという原始的な動きの繰り返しが独特のリズムを生んでいます。ことごとく娯楽映画の定石をずらしていくことで生じる違和感や居心地の悪さと、いつ起こるか分からない暴力への恐怖とで、他の映画とは違う緊張感が持続するのかも。TVのカルチャーヒーローとしても絶頂期だった頃のビートたけしが発していた色気が映画に刻み込まれていて、全力で走るたけしもレア。ラジオから流れる志ん生の落語「黄金餅」だったり、バッティングセンターだったり、草野球だったり、監督デビュー作だからか、たけし個人の趣味も詰め込んでるんだなあと改めて気づきました。前半の我妻刑事が歩くシーンと呼応して、この男が悪の道に入っていくラストはキレイな終わり方です。偶然にも、昨日観た「幸福」に続いて、川上麻衣子が知的障害者の役を演じてました。