bibliotheca lepre

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心の赴くままに

 

 

 ひっそりと

 潜めて窺っていたのに

 大きな音がして

 思わず声が出た

 

 刺された痕が疼く

 

 違う逆だ

 

 顔だけ出して

 まあるく沈む

 

 ゆっくりと

 くらい水の底へ

 あわ粒は無限

 寄る辺なく絡まる

 

 なにか欠けて

 きらりと落ちる

 空へ逃げる

 吸い込む愛は刹那

 

 拒みつづけた

 夢の流れ

 あちらこちら

 もう食べられない

 

 

 

 

 

 

 潜る空に揺れる影

 泡ツブの饗宴

 いつもの節廻し

 懐かしい痛みを待たず

 逃げ出すのも辞めて

 揺蕩うその

 紛うことなき

 細い指の起点の

 いま消えようとしているその

 

 

 

 

 

 

 めかしこんで背中から堕ちてゆく

 いつだって背中から

 お腹からのときは飛んでいる

 あのときは見つけたと思った

 一抹の期待と揺らぎゆく希望と

 指折り数えた丸い泡つぶ

 光を見た

 光のなかにいた

 

 

 

 

 

 

 

果実を炊いて宿り木に

かりそめの安息を口ずさむ

あやかせば散り散りに

儚いふりで潜り込む

見えない場所を補う偽りの景色

染み渡る復ち水の透き間で

固まった光を砕く

果てのない透過線

もう底から見上げている

星の一日をするりとなぞって

そうして

巡りくる景色を

断片的に

辿りながら

土へ還る

 

 

 

 

 

行く道 戻る道

いつも海の傍を揺られていた

光る水面を見たときのあの

拡がる気持ちは何だろう

偽りのノスタルジーを目薬に

堆く手離したもののあとさき

指先に巻いた風に似た困った後ろ姿

遠くで哭いた鳥と諸共に

海へ還る