Kawasaki ZZ-R1100の真価が明らかになったのは雑誌のインプレッションからです。
もちろん私も含めて、雑誌のレビューやインプレをそのまま信じる人はいないでしょう。記事の微妙なニュアンスから本音を嗅ぎ分け、提灯記事にフィルタをかけながら読まないと、そのマシンが自分の求めるものなのかが見えなくなってしまうのです。
ZZ-R1100(C型)
ですが… 明らかにZZ-R1100に対する雑誌のインプレッションは、今までのニューモデルを祝福を込めて褒め称えるそれとは異なりました。
パワー、加速性能、ハンドリング、エンジンフィーリング… 全てが今までのマシンのレベルを超えるものであることが感じ取れたのです。
何よりも、ラムエアーインテークシステムにより、200km/h以上の速度域で異次元の加速性能を発揮する様子や、常識外れの速度域での直進安定性など、胸の鼓動が湧き上がるような興奮を伴って、読んでいる側にも伝わってきました。
また、ただ単に速いだけではなく、低速~中速域にかけてのハンドリングの素晴らしさも兼ね備えていました。重量車にとって今まで不得意とされてきたタイトコーナーの連続する峠道においても、軽快な切り返しが可能なほど洗練された操縦性を併せ持っていたのです。
複数の雑誌の紙面で、いつもは冷静なレポータが驚きと賞賛をもって従来の基準を大きく超えるZZ-R1100のパフォーマンスを伝えていました。
私の周りでもZZ-R1100を意識しだす人が増え、何人かは真剣に購入を検討しだしました。
ZZ-R1100は市場において引く手あまたの大人気となり、完全な玉不足となりました。発売直後は120万円前後だった価格は、一部の販売店では160万円の値札が付けられました。ZZ-R1100は逆輸入車であるため、価格についてはメーカであるKawasakiのコントロールが効かないのです。
また当時勃発したアメリカとイラクの湾岸戦争により、船便のやりくりが付かないことが玉不足に拍車をかけました。
そんな中、さらなるアドバンテージの確保と性能向上のため、Kawasakiはフルモデルチェンジによりラムエアインテークをツイン化し、高速安定性の向上のためフレームを新設計したモデル(D型)を93年に発売しました。
前モデルのC型と比較して、エンジンそのものは殆ど変わっていないため、最高出力も147馬力のままでしたが、全体的な信頼性の向上と熟成を図ったモデルと言えそうです。
ZZ-R1100のC型とD型は、世界最高速の座をライバルに脅かされる事も無く、その座に居座り続けました。Kawasaki とっては1984年のGPz900R(Ninja)以来の、紛れも無くバイク史に残る名車と呼ぶに相応しいバイクだったのです。
Kawasakiイコール世界最速のイメージが完全に定着したと思われた頃、1996年にHONDAから黒船ならぬ黒鳥が世に送り出されたのです。
CBR1100XX(Super Black Bird)がそれです。
---------------------------------------------------
ZZ-R1100(D型)の主な諸元は以下のとおりです。
(括弧内は前モデルのC型)
型式:ZX1100D(ZX1100C)
発売日:国内販売無し(逆輸入でのみ購入可)
全長×全幅×全高:2165×730×1205(2165×720×1210)
軸距:1495mm(1480mm)
シート高:780mm(←)
乾燥重量:233kg(228kg)
エンジン型式:4ストローク並列4気筒(DOHC16バルブ)
冷却方式:水冷
排気量:1052cc(←)
最高出力:147PS/10500rpm(←)
最大トルク:11.2kgm/9000rpm(11.2kgm/8500rpm)
燃料タンク容量:24L(21L)
タイヤサイズ 前:120/70-17(←)
タイヤサイズ 後:180/55-17(170/60-17)
