デラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道の遺構 タンカノック橋 

 

 

 

前回・前々回に引き続きデラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道関連第3弾。今までの通り、19世紀後半から20世紀初頭までスクラントンを中心とするペンシルバニア北東部はアンセラサイト(無煙炭)で非常に栄えていました。その繁栄ぶりはすさまじく、当地域には鉄道会社が数多く(8つ?)入り乱れていました。また石炭という重量物を山岳地を突き抜けて輸送する必要から、この時期のインフラ整備は現在の基準で見ても目を見張るものが多くあります。

 

地形に関係なく、山を削り、谷を渡り、一直線に突き抜ける鉄道路線(跡)が現在もペンシルバニア各地で見ることができます。

 

タンカノック橋(Tunkhannock Creek Viaduct)もその一つで、デラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道がスクラントンから北西部に路線を伸長した中、ネックとなった山岳区間のカーブと勾配を一気に高架橋と切通で突き抜けるという大胆な改良の一つでした。

 

タンカノック橋は地元の村名を採ってニコルソン橋とも呼ばれ、文字通りスクラントンから北方1時間弱程度行ったところのニコルソン村にあります。橋は全長723メートル、10スパンにわたり、高さは約75m、1912年に完工した当時は世界最大のコンクリート構造物といわれました。供用開始は1915年です。

 

皮肉なことにタンカノック橋が完工したころから無煙炭の需要が凋落、当区間を含むデラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道の輸送需要は落ち込みました。第2次世界大戦で一時輸送量が増加したものの、減少に歯止めがかからず、最終的には他社と合併・経営破綻となります。幸運なことにタンカノック橋を含むスクラントンとニューヨーク州ビンガムトンを結ぶ区間はコンレールに集約後、大手鉄道会社であるノーフォークサザン鉄道に引き継がれ、一度カナディアン・パシフィック鉄道に移管されますが、2015年に再度ノーフォークサザン鉄道に移管されました。

 

現在、当該区間を走る列車はすべて貨物列車で一日数本となっていますが、ペンシルバニア北東部とニューヨーク州南部おおびカナダを結ぶ重要な路線として現在も活躍しているのは喜ばしい限りです。