デラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道の旧スクラントン駅舎内部

 

 

前回、デラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道のホーボーケンターミナルについて書きましたが、今回は当鉄道の中心地でアンセラサイト(無煙炭)の一大産地であったペンシルバニア州スクラントンに残るデラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道の旧スクラントン駅舎について書いてみたいと思います(なお、添付されている写真は2020年に撮影されたものです)。

 

デラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道の運炭車(スティームタウン保存車両)

 

前回のお話の通りこの鉄道は旺盛な無煙炭の需要に支えられ、19世紀後半から20世紀初頭にかけて急成長しましたが、足元のスクラントンにシンボルとなる駅舎兼事務所を建設することを計画しました。20世紀初頭にその計画が認められ1908年に完工となります。フレンチルネサンス様式で建設された建物は各所に技巧が施され、豪華に仕上がりました。建物は会社事務所としても活用されたため、1920年代には追加の事務所が増築、屋上に当時としては画期的な無線アンテナが追加されます。

 

デラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道の旧スクラントン駅舎

 

その後、スクラントンのシンボルとして君臨しますが、スクラントンの街自体が無煙炭の凋落と共に斜陽化、1970年に最後の旅客列車が出発すると、用途を失った駅舎は閉鎖されます。

 

1980年代、スクラントンは二けたに上る失業率を記録する絶不調そのものの状況でしたが、既存の鉄道インフラを活用した活性化が計画されます。その一つが「スチームタウン」という蒸気機関車を中心とする鉄道博物館の誘致、もう一つがスクラントン駅舎の再活用です。

 

駅舎は1983年にホテルとして復活、その後複数のオーナーの手を経て現在もラディソングループが運営するホテルとして活用されています。

 

駅舎内部。豪華な作りになっています。

 

現在のデラウェア・ラカワンナ鉄道の現役貨物列車。ALCO製機関車が現役で活躍

 

ちなみにスクラントンはニューヨークからも車で2時間圏内ですが、交通アクセスは車かバスのみ、永らく鉄道の復活が望まれています。ペンシルバニア側のポコノ山地を横切る旧デラウェア・ラカワンナ&ウェスタン鉄道の区間は現在も路線が存続(デラウェア・ラカワンナ鉄道といいますが元の会社とは無関係)、ニュージャージー側はニュージャージー・トランジットが一部路盤を保持しているため、実現性はありそうです。また、アムトラックによるインターシティー構想もあり、以前「スティームタウン」にもアムトラックのキャラバンがアピールをしたりしていますので、こちらも可能性は皆無ではありません。

 

「スチームタウン」を訪問する際は、ぜひ旧スクラントン駅舎も訪問してみてください。

 

スチームタウンは保存蒸気機関車含む数多くの車両が保存されていますが、LACKAWANNA鉄道塗装の機関車もいます。

 

余談①:2021年に第46代大統領に就任するジョー・バイデン氏はスクラントンで出生されました。

 

余談②:米国3大薬局で東岸で最大勢力を誇るRITE AIDはスクラントンで創業(現在の本拠地は州都ハリスバーグ)2023年にチャプタ―イレブン(日本でいう民事再生法)申請

 

余談③:スクラントン旧駅舎にはちょっと高級なレストランとカジュアルなバーがありますが、カジュアルなバーのハンバーガーがおいしかったです。チップスが手作りなのがポイント高し、でした。