病院に戻った父は、ほぼ鎮痛剤しか入っていない

抗がん剤を打ちました。



その間まともな食事はとれず、
母が作っていったフルーツ缶入りの牛乳寒天や
ヤクルトなど
濃くて喉ごしの良いものを少しずつ食べていたそう。



そして、無事にノルマをこなし
7月13日退院することになっていました。



朝、母が迎えにいくと
『お!早いなぁ』と言ってベッドに座っていた父。



やはり呂律も回らないし、少しボーッとはしていたけど
笑顔で会話ができていたそう。




家に帰るのを心待ちに、
それは楽しみにしていた父。




母が『下でお会計してきちゃうね』というと
すごく嬉しそうにしていたようでした。




ところが、母が会計から戻ると
父が眠そうにしている…



少し寝る?と聞くと頷き、ウトウトし始めた父。



母と看護師さんは、父が起きたら
車椅子に父を乗せて駐車場まで行くことにし、
準備を始めます。



父に『帰ろう』と声をかけると
『ダメだ、帰れない』
そう言ってまた寝てしまう…



…おかしい。
慌てて主治医を呼ぶと、やはり今日は帰せないと。



母は退院するもんだと思っていたので、
6階から全て荷物を運び出し、車に積んでいたが
慌てて取りに戻ることになりました。



そして戻る途中、主治医から声をかけられ




『この前は余命半年と言いました。
しかし、そこまでは持ちません。
食道ガンは急にガタガタと体調が崩れていく特徴があります。
来週がヤマだと思ってください。
会わせたい方がいたら会わせてください。』



『退院できなくなっちゃったのよー』
そう少し明るく電話をかけてきた母。
30分経たずに
『来週がヤマだって』とかかってくるとは思いませんでした。



ちょうど私たち家族は、科学館にいました。

そこで危篤とも取れる電話をもらったのです。



すぐさま主人は『帰ろう』と言ってくれ
一旦家に戻り、準備をしました。
実家までは2時間…
とにかく出来るだけ冷静を装って自分を騙し
長期滞在に必要な荷物を詰めました。



しかし当然、冷静でいられる訳もなく。



では、なぜ準備ができたのか。



もし、父に何かあったら
これを忘れずに持っていくというリストを作っておいたのです。



それは馬鹿みたいにとても細かく書いていました。
突然の連絡では、きっと何も考えられないだろうと予想できたから。



縁起でもない!とは思いましたが、長期滞在が予想されたので
小さな子どもたちがいる以上はやらねばならなかったことだと思います。



そしてその中には、喪服も含まれていました。
忘れがちな黒い靴も、数珠も
ひとまとめにしてありました。



今思えば、その準備ひとつひとつが
覚悟だったんだと思います。



大汗をかきながら、とにかく泣かないよう
必死にリストを見て詰めていき…
冷静に、冷静に。
でも早くしないと!



だんだん呼吸がおかしくなる。
暑いからか、焦っているからか
ハァハァと大きな音を立てていて、軽い過呼吸状態になってしまいましたが
手を止めるわけにはいきません。



主人が心配して
落ち着くように、一旦休憩するようにと手伝いに来てくれましたが、
子どもたちを見ててもらう方がありがたかった。



準備ができ、大量の荷物を詰め込み
主人が運転する車に乗り込んだ子どもたちは、
ジジババのお家に行けるとはしゃいでいました。



渋滞が恨めしかった。



いつもなら2時間の道が、倍近くかかって病院へ。



病院に着くと、母が待っていました。




父は大部屋の一番奥にいて
思ったより、顔色は良いなとホッとした気持ちになりました。



それでも父は苦しそうで、
『きたよー』と声をかけると頷くも
母に
『早く帰れ!治るもんも治らない!』と追いやりました。



滞在時間は1分。



いつものじいじじゃないことに、子どもたちは声も出さずに見つめていました…



父も自分の苦しい、どうにもならない状態を
私や孫に見せたくなかったんだろうなと思います。



追い出され、ロビーで母と私たちでジュースを飲むことに…



主治医にに言われたことを反芻して、
母は『仕方ないね…』と繰り返した後、



『今夜は何を食べようか!』と子どもたちに聞く。



カラ元気だろうがなんだろうが、受け止めるしかない。
父は頑張っている。
でももう現実は変えられないのだから…



子どもたちは一足早く夏休みにすることにして、
私と実家に滞在し、
荷物は幼稚園まで主人が取りに行くことにしました。
(結局同じ園に通うお友達が受け取って送ってくれることになるんだけど)






Pick Item

そういえば…今年まだ干し芋食べてない!!!
干し芋大好きっ子な息子、
一緒におやつにしよー
目がハート愛