かるがも団地 第5回公演
『意味なしサチコ、三度目の朝』
2021年8月5日(木)～8月8日(日)
花まる学習会王子小劇場
脚本・演出：藤田恭輔（かるがも団地）
脚本補佐：古戸森陽乃・宮野風紗音（かるがも団地）
舞台監督：月館森（露と枕/盤外双六）
照明：木村奏太 照明操作：岡花暖
音響：北村萌 棟梁：秋葉彩弓（Nichecraft）
音楽：Shun Yanashima、秋元陽来
衣装・宣伝美術：古戸森陽乃（かるがも団地）
撮影・編集：松本佳樹
撮影協力：在原貴生、小池匠
照明操作：岡花暖
配信技術：井上亮二（CHARA DE）
記録写真：稲垣隼
制作：宮野風紗音（かるがも団地／CHARA DE）
制作協力：す〜す〜
当日運営：秋田岳瑠（Unit Ludens）、稲垣隼、きもとれいか
出演：
波多野伶奈（秋林幸恵／反対派市民）
村上弦［猿博打］（サチコ／幸恵の孫）
北林佑基［オフワンズ］（幸恵の友人、ガソリンスタンド店長・祥太郎／反対派市民／アイドルのファン）
大西薫（幸恵の友人、中学校の英語教師・翠／先生／反対派市民／アイドルのファン）
板場充樹［猿博打］（幸恵の友人・樹希、新聞記者／サチコの父／アイドルのファン）
守谷花梨（祥太郎の恋人、病院の医療事務員・果林／反対派市民／プロデューサー）
上田茉衣子（クリーニング屋の娘・上田／児童／高校の生徒／アイドルのファン）
長井健一（市の職員・橘／人材派遣会社の営業・新人くん／児童／中学教師／高校の生徒／アイドルのファン）
藤井陽平（キャリアコンサルタント・木暮／児童／反対派市民／高校の生徒）
助川紗和子［知らない星・声の出演］（幸恵の母）古戸森陽乃*（犬／児童／反対派市民／高校の生徒／アイドルのファン／作業員／祥太郎・果林の子供）
藤田恭輔*（父／市の担当者／警察官／作業員／中学教師）
宮野風紗音*（児童／反対派市民／ALTの先生／幸恵の相方・宮野／作業員／幸恵の子供）
*＝かるがも団地
STORY
少子高齢化・人口減に歯止めのかからない秋田県能代市。地元・能代の団地を離れ、東京で派遣社員として生活する幸恵。十代を過ごした団地の取り壊しに伴い、未だ団地に住む父の引っ越しを手伝うため、５年ぶりに能代に帰省をすることに。団地で育った友人達との久々の再会。よみがえるくだらない記憶たち。でも、今の能代に、幸恵の一番の親友・サチコはもういない。これは私、秋林幸恵と、私が生まれ育った能代と、私の友達、サチコの話。【公式noteより】
2021年に上演されたかるがも団地第5回公演を映像にて。新作『三ノ輪の三姉妹』にも出演の村上弦さんがサチコ役。
最初に宮野風紗音さんが前説を行い、一緒に出てきた幸恵（ゆきえ）役の波多野伶奈さんにバトンタッチし、幸恵が物語全体の語り手を務めるのも『三ノ輪〜』と同じパターン。
物語は2019年8月、秋田県能代市（藤田さんの故郷でもある）唯一の団地が取り壊されることになり、高校卒業後、上京して地下アイドルを経て就職していた幸恵が7年ぶりに帰郷するところから始まる。
樹希、祥太郎、翠、果林といった同じ団地に住んでいた同級生たちと続々と出会うが、一番最初に友達になったサチコの姿はそこにはない。同じ8月8日生まれで母親を病気で亡くしているという共通項もあり、すぐに仲良くなった幸恵とサチコだったが、幸恵が上京して2年後、誕生日の翌日にサチコは団地の10階から飛び降りてしまっていた。
団地は幸恵にとってはサチコと初めて出会った場所であり、サチコが命を落とした場所でもある。そんな団地が壊されることはサチコとの思い出もなくなってしまう気がしたからこそ、幸恵は7年ぶりに帰郷し、思い出の場所を目に焼きつけておこうと思ったのであろう。
また、サチコが団地を死に場所に選んだことも、自分のことを忘れないでほしいというメッセージのように思えてならない。サチコが自ら死を選んだのは、表向きには化学の教師をしていた父親が生徒を相手にしてはいけないことをしていたのが原因のように見えるが、実のところ、「おかえり」と言える相手がいない孤独感がそうさせてしまったような気もする。
市の職員・橘がヒトは二回死ぬ、体が死んだ時と人から忘れられた時という話を幸恵にするシーンがあるが、本作はサチコが二度目の死、すなわち幸恵が死ぬまでを描き切り、三度目の朝を迎えたところで終わる。生きる意味が分からないと言っていたサチコだが、そんなものはやはり生き続けなければ分からないような気もする。
友人の死という重いテーマを扱いながらも、どこか暖かさの感じられる作品だった。
出突っ張りの波多野伶奈さんと村上弦さん（＆板場充樹さん）は後に久保磨介・藤本康平企画『もういらなくて綺麗』でも共演。波多野さんと村上さんの自転車ニケツシーンがとてもよかった。バランス感覚えぐっ！
配信時間1時間42分。