ハイバイ『ワレワレのモロモロ2024 札幌東京編』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ハイバイ
『ワレワレのモロモロ2024 札幌東京編』


【東京公演】
2024年8月14日(水)〜18日(日)
ザ・スズナリ
 
構成・演出・脚色:岩井秀人
ドラマターグ:谷澤拓巳 音響:中村嘉宏
照明:株式会社ラセンス 舞台監督:河内崇
衣裳:イトウワカナ(intro)
ドキュメンタリー撮影:GENIUS 2 Inc.
宣伝美術:土谷朋子(citron works) WEB:斎藤拓
記録写真(東京公演):平岩享
映像収録(東京公演):安達亨介
票券(東京公演):安達咲里、村松里美(ローソンチケット)
広報:平沢花梨
運営協力(東京公演):川合真理子
制作助手:及川晴日、林紗弥 制作:後藤かおり
企画・制作:WARE、ハイバイ
 
納谷真大『恵比寿発札幌、仕方なき弁』
納谷真大(本人)
板垣雄亮(語り/納谷の便意)
滝沢めぐみ(ネットカフェ店員/山手線乗客/CA)

足立信彦(納谷の女友達・みちる/山手線乗客/飛行機乗客)

南雲大輔(警備員/山手線乗客/飛行機乗客)

STORY
2016年7月。東京に出てきていた納谷真大は翌日、朝一番の飛行機で札幌に帰らなければならず、定宿にしている渋谷のネットカフェに向かう。そこへ女友達のみちるから電話があり、恵比寿に住む彼女の家で飲み明かす。翌朝、便意を覚えつつ駅に向かった納谷だったが、力尽きて脱糞してしまう。納谷はジーパンを急いで洗い、何とか空港に到着し、飛行機に乗り込む。

滝沢めぐみ『クローゼットのほとけさま』

滝沢めぐみ(本人)
板垣雄亮(母)
納谷真大(祖母/友人/大阪支部の信者)
南雲大輔(友人/大阪支部の信者)
足立信彦(大学時代の恋人/クリエイターの恋人)

STORY
滝沢めぐみは祖母の代からぷるぷる教の信者で、いわゆる宗教三世。子供の頃から当たり前のものと思っていたが、次第に宗教のことは友人たちの前では口にしなくなる。大阪の大学に進学しためぐみは母親から札をもらい、部屋に貼っていたが、恋人とはうまくいかず、東京に出てきてから出来たクリエイターの恋人には札を貼ることも拒否されてしまう。

足立信彦『僕の夢、社長からハト』

足立信彦(本人)
納谷真大(父/芸能事務所職員/ポーリーの母親役・下野)
滝沢めぐみ(母/消費生活センター職員/ポーリー役)
板垣雄亮(芸能事務所社長)
南雲大輔(オーディション審査員/照明)


STORY
福岡県出身の足立信彦は『教師びんびん物語』の田原俊彦に憧れて俳優を目指すが、自衛官で厳格な父には言い出せずにいた。大学卒業後、バイトで貯めた80万円と母からもらった20万円を手に上京し、芸能事務所のオーディションを受けるも失敗。仕事を見つけようと手にした情報誌で舞台出演者募集の広告を見つけて応募すると、そこはお金で役を買うような悪徳事務所だった。事務所で『三文オペラ』を上演することになるが、本番直前になってもキャストが決まらず、「何とかする」と言っていた社長自ら舞台に立つが、続行できずに中断される。

南雲大輔『アメリカで起業したら大変だった件』

南雲大輔(本人)

足立信彦(前職の部下・須見/劇団員)
滝沢めぐみ(恋人・祐希/女性クライアント)

板垣雄亮(元保険会社社員・加藤/劇団員)
納谷真大(以前勤めていた会社の会長/劇団代表)

STORY
2008年、出向先のロサンゼルスで会社が買収されたことを知った南雲大輔は、会社を辞めてアメリカで働きたい人たちのための人材紹介の会社を起業する。前職の部下・須見とともに事業は順調に拡大していくが、思わぬトラブルによって多額の借金を抱えることになる。その後、会社の売上は回復するが、以前勤めていた会社の会長に声をかけられ、新規事業に乗り出す。その間、大輔を支えていた恋人・祐希との結婚に向けて話が進むが、喧嘩別れをしてしまう。新規事業もうまくいかない中、2020年、大輔は何の当てもない札幌に移住する。


自分が体験したエピソードを台本にして、自ら演じる『ワレワレのモロモロ』シリーズ最新版。
今回は札幌に新しく出来たジョブキタ北八劇場で滞在制作を行い、札幌と東京で上演。
 
このシリーズを観るのは『ワレワレのモロモロ2022』以来2回目。前回は知っている俳優さんが多かったが、今回は一人も知らない状態。それでも充分に面白かった。
舞台上には二曲屏風の枠組が大きめのものか2つ、小さめのものが4つぐらいあって、役者陣は台詞を言いながら、大きめのものを開いたり閉じたり、天井から吊るしたり運んだりする。
この辺りは岩井さんの演出でよく見られるけど、ただ立ったままで語られると単調になりがち、肩に力が入りがちになるのでこういうアクションを入れているのかな。

トップバッターの納谷真大さんは演劇団体ELEVEN NINESの代表で、ジョブキタ北八劇場の初代芸術監督。
のっけから小学生レベルのネタではあるけど、前回に引き続きご出演の板垣雄亮さんによる語りもよく、演劇というものは自分をさらけ出すものなのだということを体現していた。

続く滝沢めぐみさんはガラッと変わって宗教三世の話。ぷるぷる教というのはかつて甲子園常連だった高校でもおなじみのあの教団かな?(御札を買わせるのかは知らないけど)
この題材だと破産とか一家離散とかもっと悲惨な展開があるのかと思っていたけど、割とライトな仕上がり。まぁ宗教なんてのはクローゼットにしまっておいて、時折、頼るぐらいでちょうどいいのかも。笑

いちばん好きだったのはコントユニット・順風男女の主宰・足立信彦さん。
こういう芸能事務所はまだまだいるんだろうなぁ。『三文オペラ』で社長がピーチャム役を務め、ガラクタを5人の乞食たちに見立てて登場なんていうのは笑うに笑えない。観客の反応はどうだったんだろう。
ここでも板垣雄亮さんがセミロングでサングラス姿のいかにも胡散臭い社長を好演。何年ぶりかでその社長と電話で話した際、ドラマ出演が決まったと報告するくだりがよかった。

最後の南雲大輔さんは作品の中でも触れられている通り、紆余曲折を経て2020年に札幌にやってきて、就職した会社を3ヶ月で辞めた後に演劇を始めたという変わり種。
演劇を始めた際に立てた「チケット4,000円以上の舞台に出る事、物語を書く事、そして、人生の多くを過ごした東京で舞台に立つ事」という3つの目標を今回同時に叶えられたことを述べた後、「続く!」で締めくくるのがなかなかよかった。
noteに上演台本あり。
 
上演時間1時間42分。