舞台『はじめてのいつもの』
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田久保柚香(家庭科教員・蝶野巴)
【私立舘島高校 生徒】
沈ゆうこ[日本のラジオ] (美術科2年生・麻葉美波)
杏奈[poco](美術科1年生・武田水玉)
菊池泰生(普通科特進クラス2年生・市松鱗太郎)
【喫茶風車】STORY
私立舘島高校の美術教師・柄本は決まった時間に退勤し、学校の最寄駅の反対側にあるカフェ「喫茶風車」で無糖のカフェラテを飲むことをルーティンにしていた。しかし、そこへ自身が顧問を務める卓上競技部の2年生・麻葉がアルバイトの面接にやってきたことから、その店の常連であることが同僚の菊池や檜垣にも知られてしまう。
久保磨介さんによる初の個人企画。
本作はカフェ「喫茶風車」を舞台にした連作短篇集になっていて、下手にソファーとテーブル、上手にカウンターとスツール数脚。壁には額が2つ。出入口は上手側を使用。
各篇にはそれぞれ「オリジナル・チャイ」、「ラガー・ビール」「ハニー・ラテ」「クリーム・ソーダ」「カフェ・ラテ」と飲み物の名前がついていて、タイトルは役者が「第◯話 ◯◯」の形で発する。
主人公である柄本はルーティンを大事にしていて、「喫茶風車」では無糖のカフェラテを頼むことにしている。いわば隠れ家的に利用していたこの店の存在を生徒に知られたことから、同僚やら他の生徒やらも店を訪れるようになって居心地が悪くなっていく。
柄本はいくら常連でいつもカフェラテを頼んでいても、「いつもの」とは言わず、律儀に無糖のカフェラテと頼むことにしているのだが、一度だけど忘れして「いつもの」と言ってしまう(その前に「無糖」を言い忘れるパターンもあり)。そこでバイト店員に詫びるところからもこの柄本という人物の人柄が滲み出ているが、彼とは対照的なのがあれこれ色々なメニューを試してみる菊池。
柄本と菊池は大学からの付き合いで、柄本が舘島高校に来たのも菊池の紹介がきっかけ。本業は鋳金作家で、オーストリアに行くため学校を辞めることになる菊池と、送別会の主催をすることを固辞しながらも寂しさを拭えない柄本との最後のやりとりにはしみじみとさせられた。
久保磨介さんが脚本・演出を務めた#Q『セルフカバーvol.1』以来のおしばい演太さんは、その佇まいからして柄本役にぴったり(あて書きかな?)。
他のキャストもそれぞれよかったけど、中では生真面目な感じの生徒・武田を演じた杏奈さんが印象に残った。
上演時間1時間28分。