アジアンドキュメンタリーズ映画祭2024『花束』(サヘル・ローズ監督) | 新・法水堂

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『花束』



2024年日本映画 94分
監督・撮影:サヘル・ローズ
脚本:シライケイタ
エグゼクティブプロデューサー:岩井俊二
音楽:SUGIZO
プロデューサー・撮影:田井えみ
プロデュース:佐東亜耶 撮影:山口英徳

出演:
黄安理
黄佳琳
河野真也
栗原直也
星野舞結花
ブローハン聡
松嶋マジアル
吉住海斗
佐藤浩市(施設職員)
サラ・オレイン(バイオリン)
諸星風羽

STORY
様々な感情を、思いを抱きながら児童養護施設で育った若者たち。傷つきながらも笑顔を絶やさない彼等が抱える孤独。一人一人が記憶を紡ぎ、心の欠片を彼等自身が全身全霊で表現。【アジアンドキュメンタリーズ映画祭2024公式サイトより】

《アジアンドキュメンタリーズ映画祭2024》特別上映作品。

サヘル・ローズさんが自身と同じ児童養護施設出身の8人の若者を集め、4年の歳月をかけて作った初監督作品。エグゼクティブプロデューサーの岩井俊二監督が題名を決めたとか(題字も担当)。
本作については、先月、Eテレにて放送された『サヘルと8人の子どもたち』でも製作の裏側を紹介していたけど、ドキュメンタリーとフィクションを融合させたような作りになっている。
8人それぞれに行ったインタビューを繋げて1本の映画にすることも出来ただろうが、サヘルさんがあえてそうしなかったのは、若者たちに表現をさせたかったから。そこには自分が表現することで救われたという思いがあるからだろう。
もちろん、それでも救われない命はあるわけで、佐藤浩市さん扮する職員にオリジナル曲を披露する河野真也さんは、映画の完成を待つことなくお亡くなりになっている。
だが、モノクロパートが続く中、最後に世界は色合いを帯びる。とりわけ、日の出の太陽が照らす海の美しさたるや! この風景があるだけでも、まだこの世の中を信じてみようという気にすらなってくる。
なお、現在の日本において親とともに暮らせない子供の数は42,000人。施設養育が中心のため、国連から是正勧告も受けているとか。最後に子供たちだけでなく、「大人が孤独にならない世界へ」とメッセージが発信されていたのもよかった。

舞台挨拶にはサヘル・ローズさんとアジアンドキュメンタリーズ代表の伴野智さんとトーク。会場に来ていた松嶋マジアルさん、栗原直也さん、ブローハン聡さんも登壇し、最後は記念撮影。松嶋マジアルさんは今後、役者を目指すのだとか。