劇団普通『水彩画』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

劇団普通

『水彩画』



2024年6月17日(月)〜23日(日)
すみだパークギャラリーささや

作・演出:石黒麻衣
舞台監督:森部璃音 技術監督:守山真利恵
照明・舞台写真:福島健太 映像撮影:杉浦仁輝
演出助手:青柳美希 宣伝美術:関根美有
制作:及川晴日 制作助手:栁本彩花
制作協力:エフ・エム・ジー

出演:
安川まり(あみ)
用松亮(あみの父親)
坂倉なつこ(あみの母親)
浅井浩介(あみの夫・充)
伊島空(幸男)
青柳美希(幸男の婚約者)

STORY
ある地方の田舎町にそこには不釣り合いな洗練されたカフェがある。午後のお茶の時間を過ぎて夕飯にはまだ早い時間。客足が引いて静まり返った店内に、ある家族の姿が見える。老夫婦とその娘夫婦。知人の絵画展に行った帰りだという。その家族だけと思われた空間に、年若いカップルが訪れる。ある知人に店を紹介されて立ち寄ったのだという。静けさが支配する店内で、老夫婦、娘夫婦、カップルの三組それぞれの時間が過ぎていく。【当日パンフレットより】

劇団普通、新作公演。

客席は対面式。
白い丸テーブルが3つ。それぞれに椅子。左右に円筒形の笠のついたスタンドライトがあり、それをつけると別場面に切り替わる。床にはメダカがいるという設定の鉢。

劇団普通はその名の通り、ごく普通の、どこにでもいいそうな人々の会話が全篇茨城弁で繰り広げられるのだけど、やっていることは結構普通ではない。
本作ではとある夫婦と妻の両親、彼らとは知り合いでも何でもない若い男女のカップルが登場する。普通なら何かをきっかけにして彼らが言葉を交わして話が展開していきそうなものだが、結局最後までお互いの存在は意識しつつも話をすることなく終わってしまう。舞台の外側では、妻の父親がトイレのドアの鍵がうまく外れずに困っていたところを若いカップルの男性が助けてくれたというエピソードは語られるが、改めて礼を言ったりすることもない。
そしてこの2組と1組は同時に会話をする(台本上では青年団風に上下に分けて書くのではなく、入り混じった状態で書かれているのだとか)ので、本当にカフェにいる人たちの会話を聞いているような感覚にすらなる。そうしたごく普通の会話なのだが、最後の方は胸がざわざわしてきて、形容の出来ない気持に襲われた。とりわけ、充に買ってもらったコーヒーカップを娘たちに使ってほしいと渡すあたりは、大袈裟な言い方をすれば、これまでの母親の人生すら感じさせるものだった。朴訥とした語りの中に人間の内面が垣間見え、現代文学を読んでいるような手触りも感じた。

用松亮さんと坂倉なつこさん(坂倉奈津子から改名されたのね)の老夫婦、娘の安川まりさんは今回も素晴らしい。これだけ見ても飽きが来ないどころかずっと見続けたい組み合わせ。

上演時間1時間40分。


この日は城山羊の会の山内ケンジさん。『風景』の時のアフタートークと同じようなやりとり。山内さんは勝手に喋ってくれるからいいけど、前川知大さんとか瀬々敬久監督とか大丈夫かな。笑

客席には石黒さんが出演した城山羊の会『萎れた花の弁明』の出演者がずらり顔を揃えていた(三鷹市芸術文化センターの森元さん含め)。