小松台東『デンギョー!』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

小松台東

『デンギョー!』



2024年5月31日(金)〜6月9日に

三鷹市芸術文化センター 星のホール


作・演出:松本哲也

CP・音楽:佐藤こうじ

舞台監督:澤根菜摘実(obbligato) 

舞台美術:泉真 音響:Sugar Sound

音響操作:今里愛(Sugar Sound)

照明:鷲崎淳一郎(ライティングユニオン)

照明操作:森川愉加(ライティングユニオン)

写真・映像:向殿政高(株式会社オプティグラフィック) 

演出助手:梅田雪那(演劇集団 円)

スタンドイン:佐藤銀平

方言指導:梢栄(劇26.25団)

空手指導:鈴木幸二 宣伝美術:吉田電話

衣装:内山ちひろ 制作:三國谷花

制作協力:吉乃ルナ、もりきよか

企画・製作:小松台東


出演:

【宮崎電業】

五十嵐明[劇団青年座](電工(現場主任)・甲斐嵩)

瓜生和成(営業部長・鈴木達郎)

尾方宣久[MONO](執行役員・阿部光男)

松本哲也(電工・安田学)

今村裕次郎(同・長友浩二)

関口アナン(同・戸高大輔)

吉田電話(同・岩切修)

土屋翔[劇団かもめんたる](同(新人)・関和也)

竹原千恵(事務員、学の妻・安田小春)

平田舞[演劇集団 円](事務員・壱岐幸恵)


佐藤達[劇団桃唄309](田原電気(下請会社)・田原秀樹)

依田啓嗣(米良産業(電材屋)・綟川剛)


STORY

デミタスコーヒーを買って現場に向かう。AMラジオしか聴けない軽トラ。県境の現場に行ったら帰りに買うのはウナギの骨。酒のつまみに最適だ。酔っぱらったら山谷ブルースを唄い泣く。あそこのビルは俺が工事した。あのマンションだってそう。社長が入院した。昔は給料手渡しだった。帰って袋を渡す相手がいる人いない人。作業着が俺たちの正装。爪の汚れも誇らしい。弁当食ったら日向で昼寝。社長が死ぬかもしれない。初めての給料で食ったのは確か寿司。 二班に分かれて社員旅行。みんなで撮った記念写真。小指と親指を立てる。社長は小指と人差し指を立てていた。みんなで笑った。――俺たちがデンギョーのデンコーだ。【当日パンフレットより】


2013年初演、2021年に再演された作品の再再演。キャストは女性陣以外は続投。

3年前の再演は予約していたものの、一身上の都合で観ることが出来なかった本作、こんなに早いタイミングで再再演してくれてありがたい限り。


舞台は宮崎電業の詰所。下手側に事務所に続く出入口。奥の壁沿いに冷蔵庫と電子レンジ、流し台、外に出る引き戸。上手側の隅にロッカーや棚が並び、その横にある窓の手前にソファ。中央にテーブルとパイプ椅子数脚。


開演30分前より人の出入りがあり、切れ目なく本篇へ(照明も徐々に客電が落ちる)。

一応、物語は東京の銀行に勤めていた阿部光男が執行役員としてやってきたところから始まるのだが、それ以前から彼らの物語は始まっていたし、これからも続いていくのだということが感じられる始まり方で、作品全体も非常にリアリティがあった。

リアリティがある、というのは何も本当の会社そっくりということではなく、この宮崎電業という会社が本当に存在していそうだなと感じさせることに成功しているという意味なのだけど、本作に登場する人物に誰一人嘘がなく、入院中の社長や社長代理の森さんなる人物にすら存在感がある。それを可能ならしめているのは、個々の人物を描きこんだ脚本とそこに肉づけを行った役者陣の力量に他ならない。


キャストでは五十嵐明さんがいかにも現場一筋でやってきたという雰囲気を醸し出し、同期で営業部長になり、デンコーたちと対立する立場となった鈴木を演じた瓜生和成さんは彼の立場なりの悲哀を感じさせる。

知的障害がある岩切役の吉田電話さんはわざとらしさがく、作品全体のノイズになっていなくてよかった。


上演時間2時間。