もちもち『何なんずっとこの風』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

もちもち その6

『何なんずっとこの風』



2024年5月25日(土)・26日(日)
イズモギャラリー

作・演出:上牧晏奈

演出助手・当日運営:矢島選手権

音響照明操作:信國ひろみ(バケツまみれ)

フライヤー撮影:藤田恭輔

制作:もちもち


演目:

①おしごと(たまに雑談)

出演:

上牧晏奈(会社員・アンナさん)

冨岡英香(会社員・ハナコさん)


STORY

2人の会社員がお仕事をしたり、雑談をしたりします。ぐる、ぐる、おし、ごと、ぐる、ぐる、おし、ごと😵‍💫労働と労働の間に吹く風、それが雑談、ぴゅっぴゅーん🍃


②はじまるよ

上牧晏奈(5年目の保育士・カエデ(25))

冨岡英香(1年目の保育士・アサコ(21))


STORY

♫はじまるよっ、はじまるよっ、はじまるよったら、はじまるよっ、いーちといーちで、にんじゃさん、どろんっ♫ 退職する保育士と、それを見送る保育士のお話。


③なんとなく優先席

冨岡英香(電車の乗客・東野さん)

上牧晏奈(電車の乗客・中西さん)

矢島選手権(車掌・声の出演)


STORY

あるところに"なんとなく優先席"という席のある電車がありました。そのときの車掌の気分で、なんとなく優先して座ってほしい人が決まります。さて、今日はどんな人が優先されるのでしょう👤


④一旦

冨岡英香(オトミ)

上牧晏奈(オマキ)


⑤何なんずっとこの風

上牧晏奈(トモ)

冨岡英香(ユウ)


STORY

トモとユウはふたり暮らしをしている。ふたりの住むアパートがある町は、最近なぜか風が止まない。風が止まなくてもトモは仕事に行く。ユウはだいたい家でぐったりしている。ユウはそんな自分が許せない。【もちもちnoteより】

作・演出の上牧晏奈さんと俳優の冨岡英香さんによるユニット、「やわらかくキレる」をテーマにした短篇集。やみ・あがりシアター『フィクショナル香港IBM』を2回観たので、冨岡さんは今月3回目。笑

このユニット自体は初めてだったが、最初から最後までお二人のほんわかした雰囲気に包まれて心地よい時間だった。
「おしごと」での握り拳にした両手を回転させながら「ぐる、ぐる、おし、ごと」と2人でやるところや、「はじまるよ」での「はじまるよったらはじまるよ 1と1で忍者だよ」といった手遊びも楽しい。
「なんとなく優先席」も優しさに満ち溢れているし、「一旦」でコーヒーを淹れたところで休憩タイムになるのも面白い。

その一方で、「おしごと」でハナコさんが働き過ぎで次第に心身のバランスを崩していったり、「はじまるよ」のカエデが5年で保育士を辞めることになったり、世知辛さも感じさせる。
また、「何なんずっとこの風」で吹き続けている風はこの社会において女性たちが直面する向かい風とも受け取れるが、彼女たちもいずれは三輪車にヨットのように帆をつけてかなりの速度で進むおばあさんのように風を利用できるようになるのだろう。や、その前に風が止めよ、という話ではあるのだけど。

上演時間55分。