海ねこ症候群 第5回本公演
『もう、どうにもトまらないっ!!』
シアター711
脚本・演出:作井麻衣子
舞台監督:松本仁志 音響:日影可奈子
照明:緒方稔記(黒猿)
照明操作:中村仁(黒猿)
衣装:邱筠筑 舞台美術:松本仁志、UPN
振付:ぞんび(劇団OZ)、河合陽花、坪田実澪
劇中曲:坪田実澪 音楽監修・広報:河合陽花
ゲネプロ写真:月舘森(露と枕)
フライヤーデザイン・チケットイラスト:古戸森陽乃(かるがも団地)
撮影協力:ぞんび(劇団OZ)
当日制作:宮野風紗音(かるがも団地)
制作:河合陽花、髙岡葵 企画:海ねこ症候群
出演:
【サクラバレエスタジオに通う人々】
髙岡葵(新社会人・木下胡桃/先代のスタジオ責任者)
佐倉はなほ[ケイポイント](婚活女子・蓮実真琴)
樋口双葉[マチルダアパルトマン](ゲーム実況系YouTuber・宮内なる)
信國ひろみ[バケツまみれ](大手企業勤務・中村志保)
河合陽花(専業主婦・伊藤裕美)
しみずあかり[自然の会](スタジオの責任者・桜先生/競走馬)
坪田実澪[海ねこ症候群](スタジオの事務・キキ(林)/競走馬)
【中華居酒屋 力亭】
新里乃愛(バイト、胡桃の同級生・大島あやみ)
作井麻衣子[海ねこ症候群](女将・登美子)
芦屋那奈(常連・大池/競走馬)
【周りを取り囲む人々】
小練ネコ(なるの妹、志保の後輩社員・宮内はる/小学生の胡桃)
長沢彩乃[各駅停車/りらっくす](胡桃の母親・木下桃子)
STORY
これは遠くて近い・・・かもしれない未来の話。この国では国民の生活充実化計画と称して、とある政策が行われていた。それは、『大人になったら何か習い事を1つ必ず習わなくてはいけない』というもの。胡桃はこの春から社会人。ある日、バレエ教室へと体験レッスン(通称:トライアル)に訪れる。自由に生きられる大人に憧れを持つ胡桃は、そこでバレエ教室に通う、なんともダサい大人たちと出会う・・・。【公式サイトより】
海ねこ症候群、下北沢進出第2弾。
この間に髙岡葵さんは劇団員に。振付およびフライヤー撮影協力にもクレジットされているぞんびさんは体調不良のため降板。
舞台はほぼ素舞台で場面によって机や椅子が運び込まれる。上手側の壁には木材を組み合わせた格子があり、サクラバレエスタジオと力亭では掛けてあるものを入れ替える。
前作『プレイス・リバティ』に続いて主宰の作井麻衣子さんが脚本・演出を務めた本作もまた、居場所を探し求める女性たちの物語となっている。
主人公の胡桃は京都の大学を卒業して東京に戻ってきたという設定。子供の頃からバレエ教室に通ってみたかったが、母親の顔色をうかがう性格の胡桃はそれを言い出すことが出来ず、社会人になってようやくトライアルのためにサクラバレエスタジオの門を叩く。
そこに集まっていたのは、婚活に勤しむ真琴、優秀な妹に引け目を感じている引きこもりのYouTuberなる、大手企業に勤務しているものの優秀な後輩(なるの妹でもある)に焦りを感じている志保、唯一の既婚者・裕美といった面々で、桜先生は酔っ払ってばかりでまともにレッスンをしている気配がない。それでも、そのバレエ教室は間違いなく彼女たちの居場所になっている。
そんな中、裕美が実は市役所勤務で、習い事を1つしなければいけないという制度のもと、きちんと運営がなされているかを内偵するために教室に通っていることが判明する。教室存続の危機に立たされる中、実績を作るためにイベントに参加するが、彼女たちが踊る「くるみ割り人形」はお約束通り、しっちゃかめっちゃかに。
胡桃の母親は「だからバレエを習うことに反対したのに」と娘をなじるが、胡桃は初めて母親に言い返す。「くるみ割り人形」はまさに胡桃が自分の殻を割る役割を担っており、彼女の変化に目頭が熱くなる。それでいて母親を悪く描かないのもよかった。
キャストでは、デカい声の樋口双葉さんがとてもいい。これまでふわふわした役どころが多かったイメージがあるが、なるの屈折した内面もしっかり表現していた。小練ネコさんとの姉妹っぷりもよかった。
上演時間1時間36分。