『Helpless』(青山真治監督) | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『Helpless』


1996年日本映画 79分
脚本・音楽・監督:青山真治
プロデューサー:仙頭武則、小林広司
協力プロデューサー:柘植靖司
撮影:田村正毅(たむらまさき)
照明:佐藤譲 録音:滝澤修

音楽:山田功 ベース・ソロ:宮内良和

編集:掛須秀一 美術:磯見俊裕

衣裳・記録:佐藤公美 ヘアメイク:大島清子
助監督:清末裕之、古厩智之
装飾:濱田佳隆、三ツ松けいこ

整音:松本能紀 音響効果:今野康之

タイミング:山岡秀雄 オプチカル:金子鉄男
キャスティングプロデューサー:狩野直人
宣伝:内藤裕子、定井勇二
制作補:髙見澤尚樹 プロデューサー補:森徹
制作担当:刈屋真
制作進行:天野竜哉、藤田功一、吉村直之

出演:
浅野忠信(白石健次)
光石研(松村安男)
辻香緒里(安男の妹・松村ユリ)
斉藤陽一郎(健次の同級生・秋彦)
伊佐山ひろ子(ウェイトレス)
諏訪太朗(コック)
永澤俊矢[特別出演](健次の兄貴分・坂梨)
りゅう雅登(健次の父・白石辰造)、梅田剛利(警官A)、木村良亮(チンピラ)、木滝和幸(坂梨の子分・五郎)、金森保(テレビドラマの出演者?)、高岡理絵(同?)

STORY
1989年、高校生の健次は、仮出所で帰って来た片腕のやくざ・安男に再会した。安男の兄貴分の坂梨が、組長が死んでしまって組はつぶれたと話しても、安男は一向に信じようとしないばかりか、坂梨を撃ち殺す。自分だけにつらい思いをさせて出所したら雲隠れか、と怒った安男は、健次に知的障害をもつ妹のユリと、大切なショルダーバッグを預けると組長の消息を追う。ユリを預かった健次は、安男との待ち合わせ場所である山中のドライブインに行くが、偶然会ったクラスメイトの秋彦、そしてドライブインの主人とトラブルを起こしてしまう。そんな折り、精神病院に入院していた健次の父親が自殺を図った。それを知った健次は、突発的にドライブインの主人たちを殺害する。健次は警察の検問をくぐってきた安男と落ち会うが、安男がユリを殺そうとしたことに腹を立てる。安男を残し、健次はユリを連れてバイクで街へ向かう。追いつめられた安男は、自らの頭に銃口を当てた。街のレストランのトイレで、健次はショルダーバッグの中身を確かめた。そこには、白い粉と安男のミイラ化した右腕が入っていた。腕には、「HELP ME」と彫られていた。席に戻ってみるとユリの姿がない。健次は急いで追いかけ、ユリとともに道をどこまでも真っすぐに歩いてゆく。【「KINENOTE」より】

青山真治監督の長篇デビュー作にして『EUREKA ユリイカ』『サッド ヴァケイション』と続く"北九州サーガ"第1作。

物語は1989年9月10日午前9時からの24時間を描く。1989年というと平成が始まった年でもあるが、主人公である高校生の健次(浅野忠信さんが高校生を演じていた時代もあるのですな。もっとも、その前は『3年B組金八先生』に出ていましたが)を除いてはほとんど時が止まったかのよう。精神病院に入院している健次の父は「インターナショナル」を口ずさんで恐らくは炭鉱夫だった在りし日の闘争の日々に浸り、安男は親分が生きていると信じこむ。喫茶店では電話が故障中、テレビは音が出ず、壁に貼られているのはプレスリーやディランのポスターといった具合。
そんな過去とのしがらみを断ち切るように、健次は喫茶店で暴れ、安男のバッグに入っていた麻薬をトイレに流し(せめてビニール袋を入れるのは止めとけよ、詰まるぞ)、バイクを乗り捨ててユリとともに歩いていくことを決意する。
いわば彼は平成という新しい時代に向かって進む若者の象徴である。と、ここで少々気になるのが女性の描写。ユリは知的障碍があり、喫茶店のウェイトレスは倦んだ日々に無気力になっているように見える。もう少し女性にも魅力的なキャラクターが欲しかった。