劇団papercraft 第10回公演
『空夢』
これは、そんな過去の話。同級生の街。同級生みんな、この街で育ちました。ずっと、今も。そして同級生の私達二人は、これから夫婦になるのです。ただそんなある日、同級生が一人、多かったことに、誰かが気づいたのです。いつ誰が、どうして多かったのかは、誰にも分かりません。ただでもだから、一人多いので一人減らさないといけないのです。この危機を共々、乗り越えよう。そんな気持ちでは、いた日々でした。【公式サイトより】
劇団papercraft、新作公演。
舞台の周囲を赤、青、黄のブロックが取り囲み、下手手前にテーブルと椅子4脚、下手奥に枠のみのドア、上手奥にキッチン、上手手前にベッド。天井からは太陽、月、雲。一部のブロックは開閉できて電話が仕込まれている。
毎度一風変わった設定を用意してくる劇団papercraftだけど、共通して言えるのはそうした設定を通して人間、ひいては自分という存在の危うさを描いているという点だろうか。
今回は"同級生"というのが1つのキーワードとなるが、もちろん一般に使われる意味とは異なる。物語は裕福な家の家政夫となった男から語られ、海岸で見つかった女性が意識を取り戻し、自分は人間ではなく、同級生の街で暮らしていたと話し始めたという。その街では、調査団の調査によって同級生が一人多いということになり、恋人と婚約したばかりのレストラン経営者の男に疑いの目が向けられる。婚約者の女は"先生"に命じられて男が本当はいなかった証拠を見つけようとする。そして、同窓会の日に一人が消されることになるが――。
本当に多かった一人は誰なのか、そもそも本当に一人多かったのか、誰が消されたのかも覚えていないような先生たちの会話を聞くにつれ、不安になってくる。思えば、これまで世界中で起きてきた、そして今も起きている民族浄化も彼らと何一つ変わりはしない。今の状況を見る限り、根拠と呼べるものがないのに存在を消滅させようとする、そんないわばディストピア的世界は消滅しそうにありませんなぁ。
キャストはいずれもよく、独特の世界観を作り上げていた。
欲を言えば、『ブギウギ』にダンサー役として出演した小栗基裕さんと入手杏奈さんが踊るシーンを作ってほしかったな。笑
上演時間1時間30分。