動物自殺倶楽部『夜会行』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

動物自殺倶楽部第三回公演

『夜会行』



2024年4月24日(水)〜28日(日)
「劇」小劇場
 
作:高木登(演劇ユニット鵺的/動物自殺倶楽部)
演出:小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)
舞台監督:吉川悦子 演出助手:和田沙緒理
照明:中佐真梨香(空間企画)
music/noise/音響:北島とわ (Portowal birch)
衣装:髙木よしこ
舞台美術:合同会社およぐひと
舞台写真撮影:保坂萌
フライヤーデザイン:詩森ろば(serialnumber)
宣伝写真 緊縛:荊子/植物:Riey/撮影:大村祐里子
制作:J-Stage Navi 制作協力:contrail
法律監修:古池秀(東京弁護士会)
企画・製作・主催: 動物自殺倶楽部

出演:
太田ナツキ(新田みどり)
木下愛華(近藤笑里・25歳)
日野あかり[日本のラジオ](秋元遼子)

輝蕗(廣川愛)
寺田結美(永井理子・29歳) 


STORY
西荻窪のとあるマンションの一室。ここで笑里の誕生パーティーを開くことになり、同棲して3年になる恋人のみどりが準備を進める。そこへ友人の遼子、次いで愛がやってくる。今日は愛が新しい恋人の理子を紹介することになっていたが、理子が男性と付き合っていて別れたばかりだと知った遼子は不信感を抱く。やがてやってきた理子は愛と同棲するつもりはないと言うが、それには大きな理由があった。

2021年7月、鵺的によって初演された作品の再演。
当初、動物自殺倶楽部の赤猫座ちこさんがみどり役の予定だったが降板し、アンダースタディの太田ナツキさんが代役を務める。

舞台ツラに2枚の透明ガラス。部屋の壁には横一面に棚があり、植物の鉢などが置かれ、壁自体も緑が覆う。下手にローテーブル、クッション、上手に机。その奥に流し台があり、隣に冷蔵庫。下手側に玄関口があるという設定で、劇場自体の階段(下手は下へ、上手は上へ)も使用。

初演はワクチン接種がまだ限定的に行われていた時期に上演され、キャストもマスクを着用しての上演だったが、今回もその点は踏襲。手指消毒もしていて、てっきり設定は2021年のままなのだと思っていたら、愛がいちばん神経質な遼子に「3年前で時間が止まってるみたい」と言う台詞で現在の設定であることを認識。この台詞はいみじくも新型コロナウイルスに対する態度についてではなく、LBGTQ+をめぐる日本の状況をも言い表している。本作にはひときわゲスな男が出てくるが(声のみ)、こんなんいまだに掃いて捨てるほどいるからなぁ。
舞台美術も象徴的で、とりわけ2枚の透明ガラスが彼女たちとの間に見えない壁があることを示唆しているかのようだった。
いつかこの作品が「前時代の作品だよね」と言われる日が来るのだろうか……。

小崎愛美理さんの演出はいつも音響へのこだわりが感じられるけど、今回も街の雑踏がひときわ大きく、それとは対照的に玄関チャイムの音が柔らかく優しい感じなのも印象に残った。
キャストは元々好きな方々が揃っているので文句のつけようもなかったが、初演ではアンダースタディを務めていた寺田結美さんが渾身の演技を見せていてグッと来た。
 
上演時間1時間21分。