アトリエ・ダンカン プロデュース『鴨川ホルモー』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

アトリエ・ダンカン プロデュース

『鴨川ホルモー』



【名古屋公演】

2009年6月26日(金)

名古屋市青少年文化センターアートピアホール


原作:万城目学(産業編集センター刊)

脚本・演出:鄭義信

美術:池田ともゆき 照明:増田隆芳

音響:藤田赤目 衣裳:畑久美子

殺陣:栗原直樹 振付:伊藤多恵

演出助手:E-RUN ヘアメイク:宮内宏明

舞台監督:松本仁志


出演:

石田卓也(安倍学)

芦名星(早良京子)

中川真吾(高村真吾)

秋山奈々(楠木ふみ)

山口龍人(芦屋淳一)

根本大介(菅原真)

松下太亮(安倍徹郎)

高畑こと美(三好亜理紗)

見上寿梨(三好亜理洲)

白井義将(松永亨)

札内幸太(坂上光)

上田悠介(紀野慎介)

上原香代子(芦屋の彼女・佐野菜月)


STORY

京都三大祭のひとつ「葵祭」でエキストラのバイトを終えた帰り道、二浪して京都大学に入学した安倍と帰国子女の高村は、「京大青竜会」を名乗るサークルから勧誘チラシを受け取る。何のサークルか分からないまま、食費を浮かせるためにお好み焼き屋「べろべろばあ」で開かれた新歓コンパに参加した安倍は、そこで理想的な鼻を持つ早良京子に一目惚れして青竜会に入る。他には大木凡人にそっくりな髪型と眼鏡で無愛想な楠木ふみ、横柄な態度の芦屋、双子の三好姉妹など計10名が入会。最初はキャンプなどをしていたが、やがて青竜会四百九十九代会長のスガこと菅原真や「べろべろばあ」の店長・安倍徹郎から、青竜会が京都産業大学、立命館大学、龍谷大学といった京都の東西南北に位置する大学間で競われるホルモーをする集まりだと知らされる。半信半疑ながらオニ語の習得に励み、「吉田代替わりの儀」を行った安倍たちはオニに出会う。そして迎えた初戦。優勢だった青竜会だったが、簡単なオニ語を間違えてしまった高村がオニに囲まれ、「ホルモーーーーーー」と断末魔の叫びをあげて敗れてしまう。しばらく引きこもっていた高村は、なぜかチョンマゲ姿になって戻ってくる。その頃、早良と芦屋が付き合っていることをようやく知った安倍は、芦屋と激しく争って青竜会を辞めようとする。スガは退会すれば大変なことが起こると言い、ホルモーに関する覚書の十七条について教える。十七条を発動すればサークルを2つに分割することができると聞いた安倍は、高村、楠木、松永、坂上を味方につけて「京大青竜会ブルース」を結成。ところがその時から全身が黒く染まったオニとすさまじい悲鳴を聞くようになる。それを消すには十七条ホルモーに勝利するしかない。そして安倍たちは芦屋率いる「京大青竜会神撰組」とのホルモーに挑む。


映画化もされた万城目学さんの長篇小説を舞台化。脚本・演出は『焼肉ドラゴン』で昨年の演劇賞を総なめにした鄭義信さん。

映画版にも出演している石田卓也くんが主人公・安倍を演じ、芦名星さんは映画版と同じ役どころでの出演。その他、D-BOYSの中川真吾くんと秋山奈々さんの他はオーディションで選ばれた人たち。

オーディションで選ばれた人たちはまったくの素人さんばかりというわけではなく、村川絵梨さんや田野アサミさんが所属していたBOYSTYLEのリーダーだった上原香代子さんや高畑淳子さんの娘・高畑こと美さんの姿も。

舞台は二段に分かれ、上段には京都の街並が描かれた書割。下段には左右に階段があり、中央部分の壁が割れて「べろべろばあ」がせり出す。

石田くんは自転車をかついで階段を下りたり上ったり。


原作との相違点としては、 

・早良京子がなぜか福島弁。

・双子の三好兄弟が女性となっていて、帰国子女の高村をめぐって争う。

・「べろべろばあ」が居酒屋ではなくお好み焼き屋で、松永と坂上がバイトをしている。

・松永と坂上はアヤシイ関係。笑

・「べろべろばあ」の店長はEXILEに入りたがっている。笑

・青竜会が分裂する際、安倍につくのが三好兄弟(姉妹)ではなく松永と坂上。

・安倍のライバル芦屋の彼女の出番が多く、最終的に紀野とくっつく。


舞台となると限られた人数で話を進めて行かなくてはならないため、原作や映画ではほとんどその他扱いとなっている三好兄弟(姉妹)、松永、坂上、紀野といった青竜会メンバーにも焦点が当てられ、個々の登場人物がより深く掘り下げられている。

また、『鴨川ホルモー』となるとどうしても「オニ」をどうするのかという点が注目されがちだが、今回の舞台版を観ていて、映画版がイマイチだと感じた理由が判った気がした。

というのは、「オニ」はオニ語を習得し、オニと契約した者たちだけが見えるようになるという設定なのに、映画では当然のことながらスクリーン狭しとオニが現れてしまう。見えなければ映画にならないのでそれはいいとしても、判っていないなぁと思ったのはホルモーをネット中継してしまう点。本来、闇にいるべき存在をそんなに表にさらしてどうすんのと言いたくなる。


「吉田代替わりの儀」も映画版よりよっぽどよかった。なぜか「ワンサカ娘」を歌って踊りながら服を一枚ずつ脱いで行き、最後はパンツに手をかけたところで暗転でもするのかと思っていたらちゃんと(?)全裸に。

そこで一幕が終了。それを告げに登場した双子の姉妹がパンツ回収係。笑


全篇を通して、若者たちのエネルギーにあふれた舞台となっていた。

くるりの「ばらの花」のイントロに始まり、最後の「日曜日よりの使者」まで選曲もよし。

故郷に錦を飾った石田卓也くんはカーテンコールの挨拶でも好青年。器用な役者さんではないが(笑)、これからも頑張って欲しい。