青年団 こまばアゴラ劇場サヨナラ公演『S高原から』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

青年団 第99回公演

『S高原から』



2024年4月5日(金)~22日(月)

こまばアゴラ劇場

 

作・演出:平田オリザ

舞台美術:杉山至 舞台監督:中西隆雄

照明:西本彩 衣裳:正金彩、中原明子

宣伝美術:kyo.designworks

票券:服部悦子 制作:金澤昭

 

出演:

吉田庸(入院患者、絵描き・西岡隆)

村田牧子(面会人、元婚約者・上野雅美)

南風盛もえ(入院患者、絵のモデル・前島明子)

木村巴秋(半年の入院患者・村西康則)

瀬戸ゆりか(面会人・大島良子)

田崎小春(大島良子の友達・佐々木久恵)

中藤奨(四年目の入院患者・福島和夫)

串尾一輝(面会人・鈴本春男)

和田華子(同・藤原友子)

井上みなみ(同・坂口徹子)

山田遥野(入院患者妹・吉沢貴美子)

松井壮大(入院患者兄・吉沢茂樹)

永山由里恵(新しい入院患者・本間)

大竹直(医者・松木)

南波圭(看護人・藤沢知美)

島田曜蔵(同・川上俊二)


STORY

高原のサナトリウムで静養する人、働く人、面会に訪れる人…。静かな日常のさりげない会話の中にも、死は確実に存在する。平田オリザが新たに見つめ直す「生と死」。【公式サイトより】


こまばアゴラ劇場サヨナラ公演第1弾。

1991年初演作。当初は2022年版と同じキャストでの上演予定だったが、本間役の倉島聡さんが体調不良のため降板。


舞台は2022年版を踏襲。10段ほどの棚が前回より大きくなったように感じるのは気のせい?

とうとう通い慣れたこまばアゴラ劇場が閉館ということもあってか(とは言えこの8年ほどだけど)、堀辰雄『風立ちぬ』の一節、「風立ちぬ、いざ生きめやも」をめぐる解釈が殊の外印象に残った。

そもそもこの一節はポール・ヴァレリーの詩を堀が訳したもので『風立ちぬ』の冒頭にはフランス語の原詩が掲載されている。原文の意味は「風が起こる。生きようとしなければならない」というものだけど、堀の訳だと「生きられるだろうか、いや生きられないだろう」となってしまう。本作の舞台でもあるサナトリウムという場所では堀の訳文の方がしっくり来る。死の影はあっても不思議と後ろ向きにはならず、ただひたすらしみじみと生の意味を噛みしめる作品だった。


倉島さんの代役・永山由里恵さんはなかなか弾けていて頑張っていた。


上演時間1時間42分。