『メロスたち』(折口慎一郎監督) | 新・法水堂

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『メロスたち』



2023年日本映画 76分
監督・撮影・編集:折口慎一郎
撮影・編集:ふしきさくら 撮影:熱田優雅
音楽:小林有希子
挿入歌:「音楽をしよう」作詞/作曲/歌:矢田太朗、「掛合高校学園歌」作詞:春日正光 作曲:小林昭三 
劇中原作:「山月記」(作:中島敦)、「走れメロス」(作:太宰治)
企画:プロダクション26

出演:
曽田昇吾(暴君ディオニス/地の文の語り)
常松博樹(メロス)
石飛圭祐(セリヌンティウスなど)
佐藤隆聖(照明担当)
亀尾佳宏(松江工業高等学校演劇部顧問)

野々内詩織/亀瀧琉那/石倉凜/潮保歩島根県立松江工業高等学校演劇部)、勝部瑞穂(島根県立三刀屋高等学校演劇部)、堀江ゆずな(劇団一級河川)、黒太剛亮(黒猿)、曽田久美子(昇吾の母)


STORY
太宰治の小説「走れメロス」を基にした創作舞台『走れ!走れ走れメロス』で、コロナ禍にもかかわらず予想外の評価を得た島根県の掛合分校演劇同好会。しかし、演劇の世界に導いた顧問は異動し、4人だけのメンバーも3年生に進級。それぞれ進路を決める中、曽田昇吾は1人で中国大会の舞台に立っていた。「オレだけ演劇やってていいんですかね」。卒業が近づいていた。【公式サイトより】

前作は終盤に感動の波が押し寄せたが、今作は前作の映像も出てくるものだから冒頭から涙腺を刺激されてしまう。
今作では亀尾先生が異動となった後、高校3年生になった4人の1年間が描かれる。進路活動もある中、演劇を続けたのは曽田昇吾さんのみ。彼は松江工業高校に赴任した亀尾先生の指導を仰ぎながら、一人で「山月記」を題材にした作品「走れ!山月記」に取り組み、見事地方大会を勝ち抜く。
曽田さんが1年間で見違えるほど演技が上達したのも驚きだが、彼は卒業後も役者の道を目指し、中国地区高校演劇発表会での演技を終えるとそのまま空港に向かい、東京で文学座附属演劇研究所の試験を受ける。お母さんもインタビューに答えていたけど、一時は停学処分を受けるなどしてきた曽田さんがこうやってやりたいことを見つけられたのだから、人と人との出会い、とりわけ中高生での出会いというのは人生を左右するぐらい大きなものだと改めて感じ、またそこでもこの出会いの奇跡に涙してしまう。

その後、亀尾先生が関わってきた3校の合同公演『卒業式』が「劇」小劇場で上演することになり、4人が再結集するのも胸熱な展開。常松さんは自衛隊、石飛さんは介護の道と卒業後の進路は異なるけれど、また何年後かに一緒に演劇をやろうという約束がいつの日か果たされるのを期待したい。