『アメリカン・フィクション』
AMERICAN FICTION
2023年アメリカ映画 118分
脚色・監督・製作:コード・ジェファーソン
原作・製作総指揮:パーシヴァル・エヴェレット"Erasure"
製作:ベン・ルクレア、ニコス・カラミギオス、ジャーマイン・ジョンソン
撮影監督:クリスティーナ・ダンラップ
美術:ジョナサン・グッゲンハイム
編集:ヒルダ・ラスラ 衣裳:ルディ・マンス
音楽:ローラ・カープマン
キャスティング:ジェニファー・ユーストン
出演:
ジェフリー・ライト(セロニアス・「モンク」・エリソン)
トレーシー・エリス・ロス(セロニアスの姉リサ・マジカル・エリソン)
ジョン・オーティス(代理人アーサー)
エリカ・アレグザンダー(コラライン)
スターリング・K・ブラウン(セロニアスの兄クリフォード・エリソン)
イッサ・レイ(作家シンタラ・ゴールデン)
レスリー・アガムズ(セロニアスの母アグネス・エリソン)
アダム・ブロディ(映画監督ワイリー・ヴァルデスピーノ)
キース・デイヴィッド(小説の登場人物ウィリー・ザ・ウォンカ)
マイラ・ルクレシア・テイラー(エリソン家のお手伝い・ロレイン)
レイ・アンソニー・トーマス(メイナード)
オキエリエテ・オナオドワン(小説の登場人物ヴァン・ゴー・ジェンキンズ)
ミリアム・ショー(編集者ポーラ・ベイダーマン)
マイケル・シリル・クレイトン(マーケティング部ジョン・ボスコ)
パトリック・フィッシュラー(大学の同僚マンデル)
ニール・ラーナー(文学賞選考委員ウィルソン・ハーネット)
J・C・マッケンジー(ニューイングランド書籍協会会長カール・ブラント)
ジェン・ハリス(文学賞選考委員アイリーン・フーヴァー)
ベイツ・ワイルダー(同ジョン・ダニエル・シグマーセン)
スカイラー・ライト(学生ブリタニー)、ジョン・エイルズ(大学関係者レオ)、カーメン・キューザック(同ジルダ)、ジョゼフ・マッレラ(作家マシュー・ウィルソン)、スティーヴン・バレル(司会ジョーダン・フィリップス)、ニコル・ケンプスキー(シンタラのモデレーター)、ベッキー・デニス(クリニックの受付)、ライアン・リチャード・ドイル(書店員ネッド)、ケイト・アヴァロン(パティオの女性)、ダスティン・タッカー(近所の住人フィリップ)、マイケル・ジブリン(コララインの恋人ジェラニ)、ミシェル・プラウド(バルガーの看護師)、デイヴィッド・デ・ベック(バルガー医師)、グレタ・クィスプ(老人ホーム職員ラズ・ボルケス)、エル・シオーレ(アーサーの秘書レイン)、ジャスティン・フィリップス(アーサーのインターン)、ジェイソン・アルマーニ・マルティネス(老人ホームの職員)、セレステ・オリヴァ(ティーフェル医師)、ミーガン・ロビンソン(番組ホスト・ケニヤ・ダンストン)、クリストファー・バロウ(メイナードの息子?バート)、アレグザンダー・ポブツキー(クリフの友人ケニー)、ジョシュア・オルマイド(同アルヴィン)、チョヤン・チェシャツァン(ワイリーの助手)、マイケル・マルヴェスティ(私服警官)
STORY
ロサンゼルスの大学で英文学を教えている作家のセロニアス・"モンク"・エリソンは、新作小説を書き上げるが、"黒人らしくない"として拒絶される。講義中の差別用語をめぐって大学から休暇を取るように言われたモンクは故郷ボストンのブックフェアに参加するが、ステレオタイプな黒人を書いた作家シンタラ・ゴールデンのデビュー作がもてはやされている状況に絶望する。立ち寄った実家では母の認知症が悪化し、ゲイの兄クリフは放蕩三昧、頼みの綱であった外科医の姉リサが急死してしまう。葬儀後、ロサンゼルスに帰ろうとするモンクだったが、向かいに引っ越してきたコララインに惹かれて留まることにする。そんな中、モンクはスタッグ・R・リーという逃亡犯が書いたという設定で典型的な黒人が登場する小説『マイ・パフォロジー』を完成させる。代理人のアーサーは難色を示すが、出版したいという編集者が現れる。更に映画化の話も進む中、モンクはタイトルを『ファック』に変えるよう要求するが、これも通ってしまい、刊行されるや大ヒット、更には自身が選考委員を務める文学賞の候補になってしまう。
パーシヴァル・エヴェレットさんの"Erasure"を映画化。これが長篇監督デビュー作となるコード・ジェファーソンさんは本作でアカデミー脚色賞を受賞。
ジェフリー・ライトさんがアカデミー主演男優賞にノミネートされていながら、日本では劇場未公開、Amazon Prime Videoでの配信のみとなった本作だが、題材は今日的でオフビートな笑いに満ちた作品だった。
主人公の名前がセロニアスだからあだ名が「モンク」なのは、日本で言うと苗字が片岡だからあだ名が鶴太郎みたいなものだが、エリソンは『見えない人間』のラルフ・エリソンから。
かつては「見えない」、つまり存在自体を認められていなかった黒人が、文学や映画で描かれること自体は喜ばしいことだが、その描き方は紋切り型。自分が黒人だからと自分の作品が「黒人文学」に分類されることを嫌がるモンクにとっては、そういった作品がもてはやされる状況は実に耐えがたいもの。
そんな彼がいわば余技で書いた小説が話題となり、映画化が決まったり文学賞を受賞したりするあたり、現在の文学界、映画界を痛快に笑い飛ばしている。作品自体が入れ子構造になっていて、自己に対する批評性を失っていない点もよかった。
ジェフリー・ライトさんはノミネートも納得の演技で、作品に説得力を与えていた。
配信開始当初、引用符の閉じる方が全部「?」になっていたが、現在は修正済。