CoRich舞台芸術!プロデュース『イノセント・ピープル〜原爆を作った男たちの65年〜』 | 新・法水堂

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CoRich舞台芸術!プロデュース【名作リメイク】

『イノセント・ピープル〜原爆を作った男たちの65年〜』

INNOCENT PEOPLE



2024年3月16日(土)〜24日(日)
東京芸術劇場シアターウエスト

脚本:畑澤聖悟(渡辺源四郎商店)
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
美術:稲田美智子 照明:榊󠄀美香
音楽・音響:佐藤こうじ 音響操作:日本有香
劇中歌翻訳:右近健一
衣装:堀口健一、喜多優介 衣装進行:内田靖子
演出助手:石塚貴恵 小道具製作:佐藤区役所
舞台監督:本郷剛史 映像制作:高橋啓祐
映像操作:中野亜美 稽古場代役:岡本篤
宣伝美術:チャーハン・ラモーン
宣伝・パンフレット写真:保坂萌
宣伝・パンフレットヘアメイク:田沢麻利子、佐野真知子、林美由紀
パンフレットデザイン:吉田電話
パンフレット年表監修:三原一太
制作:笠原希 企画協力:斎藤努、吉田敏
プロデューサー:川田希
企画・製作:CoRich舞台芸術!プロデュース

出演:
山口馬木也(ブライアン・ウッド)
川島海荷(娘シェリル・ウッド)
池岡亮介(息子ウィリアム(ビル)・ウッド)
川田希(妻ジェシカ・ウッド)
小日向春平(シェリルの夫タカハシ・ヨーイチ)
森下亮[クロムモリブデン](ブライアンの仲間ジョン・マッケラン)
堤千穂[演劇ユニット鵺的](ジョンの教え子、のちの妻リンダ・マッケラン)
三原一太[はらぺこペンギン!](ブライアンの仲間キース・ジョンソン)
水野小論[ナイロン100°C](キースの妻ニナ・ジョンソン)
内田健介(ブライアンの仲間グレッグ・シウバ)
安川摩吏紗(グレッグの妻マーシャ・シウバ)
阿岐之将一(ブライアンの仲間カール・コワルスキー)
大部恵理子(ジェシカの同僚看護婦ルーシー・ローチ)
神野幹暁(グレッグとマーシャの息子リチャード・シウバ)
花岡すみれ(シェリルの娘タカハシ・ハルカ)
保坂エマ(ヘルパー・ベロニカ・タバーレ)

STORY
アメリカ ニューメキシコ州ロスアラモス。原子爆弾開発に従事した科学者ブライアン・ウッド。ヒロシマ・ナガサキに落とされた2発の原爆を作り上げた5人の若者たち。これは、彼らが歩んだアメリカの「第二次世界大戦後」の物語である。アメリカは朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争と、戦地へ若者を送り続けた。戦後も原爆・水爆製造に携わるブライアン。しかし、彼の息子はベトナムへ、そして娘はヒロシマの被曝2世と結婚する。【公式サイトより】

演劇ポータルサイトのCoRich舞台芸術!が【名作リメイク】として初の舞台作品プロデュース。第1弾は2010年、劇団昴ザ・サード・ステージで初演された畑澤聖悟さんの戯曲を日澤雄介さんが演出。

舞台中央にテーブルと椅子、下手にベンチと椅子。後方は段差がついており、全体的に茶褐色。背景に年号と場所、ブライアンの年齢が表示される。

先日発表された米アカデミー賞で作品賞・監督賞をはじめ7部門を制覇した『オッペンハイマー』が物議を醸しつつも、ようやく日本で公開されるが、本作もまた原子爆弾開発に関わった科学者たち(こちらは架空の人物)を描いており、タイムリーな上演となった。
物語は1963年、ニューメキシコ州ロスアラモスにあるブライアンの自宅にかつての仲間が妻や恋人を連れてやってくるところから始まり、1945年、1976年、2002年、2010年(初演された年)と時代を行き来しながら展開していく。
そこで感じるのは、アメリカという国は常に戦争に関わっているという点。第二次世界大戦後も朝鮮、ベトナ厶、イラクと多くの若者を戦地へと送り込んできた。果たしてそれらの戦闘で使用された化学兵器の開発に携わってきた科学者たちは、罪もない多くの市民を殺してきたことに対して責任がないと言えるのかどうかというのが本作の骨子。タイトルの「イノセント・ピープル」は犠牲者と科学者双方を指しているのであろう。
皮肉なことに、ブライアンの娘シェリルは平和活動をしていく中で出会った被爆二世である日本人タカハシと結婚を決める。ブライアンは激怒して「ここから出ていけ」と娘を勘当するのだが、彼にやがて生まれてくる孫が被爆三世になることを嘆く資格はないであろう。
登場する日本人が白い仮面をつけているのが実に不気味な仕掛け(タカハシは途中で取るけど)で、日本人に対する侮蔑表現や見下した発言も出てくるけど、こうした見方をされている(過去形ではなく)のは紛れもない事実。まさに今、観るのにふさわしい作品であった。

キャストはいずれもよかったが、海兵隊員のグレッグを演じた内田健介さんが特に目を引いた。

上演時間2時間18分。