MONO『御菓子司 亀屋権太楼』 | 新・法水堂

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MONO 第51回公演

『御菓子司 亀屋権太楼』



【東京公演】
2024年3月1日(金)〜10日(日)
ザ・スズナリ

作・演出:土田英生
舞台美術:柴田隆弘
照明:吉本有輝子(真昼)
音楽:園田容子 音響:堂岡俊弘
衣裳:清川敦子 舞台監督:青野守浩
演出助手:neco(劇団三毛猫座)
照明操作:池辺茜、岩元さやか
演出部:白坂奈緒子、習田歩未
イラスト:望月梨絵
宣伝美術:西山榮一(PROPELLER.)
制作:垣脇純子、豊山佳美
企画・製作:キューカンバー

出演:
尾方宣久(創業者の次男、副社長・田代祐吉)
水沼健(創業者の長男・田代吉文)
立川茜(吉文の娘、従業員・田代早紀)
金替康博(和菓子職人・道庭俊)
奥村泰彦(事務担当・青山和真)
高橋明日香(カフェ担当・奈良原瞳)
渡辺啓太(アルバイト・北川泰生)
土田英生(職業不詳・佐倉玄)

STORY
江戸時代から続いてきたらしい和菓子屋「亀屋権太楼」が、経歴の捏造に端を発した騒ぎで存続の危機に立たされる。新しい社長は評判の人格者。彼なら道を誤らないはずだ。店、家族、そこに関わる人たちの10年間。【公式サイトより】

年に1度のお楽しみなMONO新作公演。
石丸菜津美さんは産休中のため、

舞台は三方がタイル状の壁で囲まれ、上手下手の手前と奥それぞれに出入口。机や椅子、棚などは壁に収納されていて、ドアも壁に一体化。場面によって、奥の壁の上手上方には「御菓子司 亀屋権太楼」の看板、下手上方にカフェ「CAME & GONE」の看板。

タイトル通り、中部地方にある御菓子司 亀屋権太楼(かめやごんたろう)の山あり谷ありの10年を描いた本作。MONO作品でこれだけの月日が経過するのは初めての試みで、場面転換もいつもより多いのだけど、舞台美術も凝っていてキャスト陣による整然とした転換も見どころの一つ。
10年の間に先代社長が亡くなり副社長の次男が跡を継いで業態を和風カフェメインに切り替えることにしたり、他の会社で働いていた長男が怪しげな男に唆されて古参の社員とともに乗っ取りを図ったり、結局長男は無能で再度、次男が戻ったり、15年もバイトを続けた男が同じく怪しげな男に唆されて偽装結婚させられたり……と様々な出来事があるのだが、フォーマットの差異はあれ、上質な会話劇である点は同じ。
土田さんの根底には人間、時には嘘もつくし裏切るし、どうしようもなかったりするけれど、早紀が吉文に対して言うように「最後の最後で憎め」ないという思いがあるのだと思う。だからいつもMONOの作品を観ると人に対して優しい気持になれる。とりわけ本作では最後の吉文と祐吉兄弟のやりとりが堪らなくよくて自分でも意外なほど泣けてきてしまった。
ただ一点、道庭、青山、瞳の3人がミツ原と呼ばれる被差別部落出身という設定の扱いはやや消化不良だった。

上演時間1時間56分。