『サン・セバスチャンへ、ようこそ』
Rifkin's Festival
2020年スペイン・アメリカ・イタリア映画 92分
脚本・監督:ウディ・アレン
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
美術:アライン・バイネ
衣裳:ソニア・グランデ
編集:アリサ・レプセルター
音楽:ステファーヌ・レンブル
出演:
ウォーレス・ショーン(モート・リフキン)
ジーナ・ガーション(スー)
ルイ・ガレル(映画監督フィリップ)
エレナ・アナヤ(ドクター・ジョアンナ・ロハス)
セルジ・ロペス(ジョアンナの夫、芸術家パコ)
クリストフ・ヴァルツ(死神)
タミー・ブランチャード(弟の妻ドリス)、スティーヴ・グッテンバーグ(モートの弟)、リチャード・カインド(モートの父)、ナタリエ・ポサ(モートの母)、キャメロン・ハンター(若き日のモート・リフキン)、ダグラス・マグラス(ギル・ブレナー)、エンリケ・アルセ(トマス・ロペス)、アンドレア・トレパット(ドクター・ロハスの助手)、ヤン・テュアル(ポール)、ジョージナ・アモロス(パコの愛人デロレス)、ダミアン・チャパ(映画祭参加者)、ボビー・スレイトン(同)、ステファニー・フィゲイラ(ホテルのレポーター)、ルス・チプリオータ(同)、ゴデリヴ・ヴァン・デン・ブラント(同)、マヌ・フォローラ(同)、イツィアール・カストロ(庭にいる女)、イザベラ・ガルシア・ロルカ(ミス・ワインスタイン)、リチャード・カーロウ(ラビ・ミンツ)、ユーリ・D・ブラウン(司祭)、カルメン・サルタ(マルシア・コーエン)、ベン・テンプル(ドクター・クライン)、パプロ・セヴィリヤ(屋上のレポーター)、ブライアン・フラナガン(同)、エレナ・サンス(カクテルパーティーの招待客)、リック・ジンゲイル(同)、ケン・アップルドーン(同)、ニック・デヴリン(ランチの招待客)、ナタリア・ディセンタ(同)、カリーナ・コロコルチコヴァ(ディナーの招待客)、ダニエル・ホルヘ(レストランの男/パーティーの男)、イニゴ・エトセベステ(映画祭のホスト)、マイケル・ガーヴィ―(精神科医)
STORY
かつて大学で映画を教えていたモート・リフキンは、今は人生初の小説の執筆に取り組んでいる。映画の広報の妻スーに同行し、サン・セバスチャン映画祭に参加。スーとフランス人監督フィリップの浮気を疑うモートはストレスに苛まれ診療所に赴くはめに。そこで人柄も容姿も魅力的な医師ジョーとめぐり逢い、浮気癖のある芸術家の夫との結婚生活に悩む彼女への恋心を抱き始めるが…。【公式サイトより】
ウディ・アレン監督、2020年公開作(アメリカでの公開は2022年)。
近年はヨーロッパを舞台にすることが多いウディ・アレン監督、本作は毎年9月に国際映画祭が開かれるスペインのサン・セバスチャンを訪れた夫婦を中心にしたコメディとなっている。
主人公のモートはこれまでの作品同様、監督自身を投影したかのようなキャラクターで、かつては大学で映画を教えていたが、今は書き終わりそうにない小説に取りかかっている。映画の広報をしている妻スーに付き添ってニューヨークからサン・セバスチャンへとやってくるが、妻とフランス人映画監督フィリップの仲を疑う一方で、自分は診察してもらった医師のジョーが気に入り、単なる虫刺されで病院に行こうとさえする。とにもかくにも彼の不器用な感じが可笑しくてたまらない。
結局、モートはスーから離婚を切り出されてしまうが、彼にとってはその方がよかったのかもねと思えるような前向きな気持になれるエンディングだった。
そんな彼が見る夢はモノクロ映画仕立てで、ウディ・アレン監督が敬愛してやまないフェデリコ・フェリーニ監督やジャン=リュック・ゴダール監督、そしてイングマール・ベルイマン監督(ウディ・アレン監督作品のクレジットがシンプルなのはベルイマン監督の影響なのは有名な話)らへのオマージュとなっている。いわばこの作品は60年に及ぶキャリアを誇るアレン監督から映画への恩返しでもあろう。
とりわけ終盤の死神とのチェスをするベルイマン監督『第七の封印』パロディには大笑い。
モートが家でのランチを夢見るシーンで、「どんな映画を観たらいいの?」と聞かれて稲垣浩監督の『忠臣蔵』と黒澤明監督の『用心棒』を挙げ、主演は誰々、音楽は誰々と答えて場を白けさせるのには苦笑してしまったが。