カリンカ『エアスイミング』 | 新・法水堂

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カリンカ Vol.4

『エアスイミング』

AIRSWIMMING


2024年2月28日(水)〜3月3日(日)
小劇場楽園

作:シャーロット・ジョーンズ
翻訳:小川公代
演出:堀越涼(あやめ十八番)
舞台監督:森脇洋平 舞台美術:平山正太郎
照明:齋藤拓人 音響:田中亮大(Paddy Field)
音響操作:薮田顕都 演出助手:小関悠佳
宣伝美術:デザイン太陽と雲
宣伝写真:久富健太郎
宣伝メイク:伏屋陽子(ESPER)
舞台写真:保坂萌 映像収録:岡部剛
当日運営:及川晴日(婆婆駄馬)
制作協力:はんなりぽん斗
企画・プロデュース:橘花梨

出演:
小口ふみか(ドーラ・キットソン/ドルフ)
橘花梨(ペルセポネー・ベイカー/ポルフ)

STORY
一九二〇年代イギリス、精神異常の烙印を押され、収容施設に収監された二人の女。社会から孤絶した彼女たちは、<想像力>と<声>を頼りに、生き延びようとする。排他的で不寛容な時代に絶望の淵で出会った二人が、1日1時間だけのもうひとつの人生を泳ぐ。【公式サイトより】

1997年初演、日本では2018年に初演されたシャーロット・ジョーンズさんのデビュー作となる二人芝居。

舞台には白いバスタブ。その周囲を囲むようにカーテンがかけられるようになっている。バスタブの上手側に金魚鉢。舞台と対角線上にある劇場入口側の壁にシンク。

物語は1924年、ペルセポネーが触法精神障害者として聖ディンプナ精神病院に収容されるところから1972年までの約50年間が描かれる。ペルセポネーより2年先に精神病院に入っていたドーラとともに風呂掃除などの任務をこなしていくのだが、ドーラはドルフとして、ペルセポネーはウィッグをつけてポルフとして別人格となることで過酷な日々を生き抜いていく。
ポルフはドリス・デイさんの「ケ・セラ・セラ」を調子外れに歌い、"Secret Love"、"Perhaps, Perhaps, Perhaps"、"Dream A Little Dream of Me"、"Fly Me to the Moon"、"It Had to Be You"といったナンバーも劇中で使用され、ストーリーとも絡まっていく(ドリス・デイさんが生まれたのが、ドーラが収容された1922年というのも決して偶然ではないだろう)。
様々な苦しみを抱え、理不尽な目に遭ってきたドーラとペルセポネーがエアスイミングするラストは開放感に満ちたものだった。

正直なところ、現実と虚構が入り混じった本作の内容をどれだけ理解できているかと問われれば甚だ心もとないのだが、小口ふみかさんと橘花梨さんの演技がとにもかくにも素晴らしく、眼の前で繰り広げられる圧倒的な台詞量とスピーディーな展開に終演後もしばらく2人の声の残響が続いていた。
ちなみに本作は5月にも同じ劇場で別の団体が上演を予定しているとのことで、見比べてみるのも一興。