『その鼓動に耳をあてよ』(足立拓朗監督) | 新・法水堂

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『その鼓動に耳をあてよ』



2023年日本映画 95分

監督:足立拓朗

プロデューサー:阿武野勝彦、圡方宏史

音楽:和田貴史

音楽プロデューサー:岡田こずえ 

撮影:村田敦崇 音声:栗栖睦巳 TK:清水雅子 

音響効果:宿野祐 編集:髙見順


出演:

蜂矢康二(救命医)

北川喜己(救命救急センター長)

櫻木佑(研修医)

河野弘(名古屋掖済会病院院長)


STORY

全国屈指の荷揚げ量を誇る名古屋港から北へ3km地点にある名古屋掖済会(えきさいかい)病院。そのER(救命救急センター)は、救急車の受け入れ台数が年間1万台と愛知県内随一だ。24時間365日、さまざまな患者が運び込まれてくる。耳の中に虫がいると泣き叫ぶ子ども、脚に釘が刺さった大工職人、自死を図った人…。“断らない救急”をモットーに身寄りのないお年寄りから生活困窮者まで誰でも受け入れる。医師は言う。「救急で何でも診るの“何でも”には、社会的な問題も含まれる」と。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックで、救急車は連日過去最多を更新。他の病院に断られた患者が押し寄せ、みるみるベッドが埋まっていく…。【公式サイトより】


東海テレビドキュメンタリー劇場第15弾。


基となっているのは、2022年3月に放送され、文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門優秀賞を受賞した『はだかのER 救命救急の砦 2021―22』。

その番組はたまたま帰省中に見たのだけど、テレビ放送時にはあった沢村一樹さんのナレーションは映画化に際してカットされている。


1948年に名古屋市中川区に開院した名古屋掖済会病院。1978年に東海地方で初めてのER(救命救急センター)を開設し、今では年間1万台の救急車受け入れを誇る。

ドラマなどではカッコよく描かれるERではあるけれど、実際は「何でも診る」救命医は各分野の専門医に比べて下に見られることが多い。この「何でも診る」というのは蜂矢医師いわく、病気の何でもではなく社会の何でもを見るということ。中には自殺を図った人もいれば、雪の寒さから逃れるために保険証もないままやってくるホームレスの人もいる。かと思えば、鼻にどんぐりを入れて取れなくなってしまった男の子も。

2020年からのコロナ禍は開設以来の大きな試練だったと言ってもいいと思うが、何軒もの病院に断られ続けた患者も何とかして受け入れてきた掖済会病院も、さすがに満床状態で断らざるを得なくなる。

そんな大変な状況下にあっても、研修医の櫻木医師が2年間の初期研修期間を終えた後も救急科に残りたいという希望を表明するシーンにはグッときた。

もう少し救命医の立場向上をめぐって深堀りしてほしかった気もするけど、北川センター長が昨年4月に救急科出身初の院長に就任したとのことで、少しは改善されることを期待。