藤家と南風盛と中條『蝶のやうな私の郷愁』 | 新・法水堂

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藤家と南風盛と中條

『蝶のやうな私の郷愁』



2024年2月16日(金)〜18日(日)
アトリエ春風舎

作:松田正隆
クリエーションメンバー:藤家矢麻刀、南風盛もえ、中條玲
スチール:小池舞 照明協力:緒方稔記
制作:中條玲

出演:
藤家矢麻刀(男)
南風盛もえ(女)

STORY
台風が近づく中、男が仕事から帰ってくる。女は食事の用意をしながら駅前に建設中のマンションの話を始め、見に行ってみないかと提案する。女も夕食を食べ始めるが、停電したため、2人でローソクを探す。そんな中、結婚する前、男が女の死んだ姉に土産として買ってきた貝殻が見つかる。男は海に行ったことがないという女を海に連れて行くと約束する。

1989年初演、1998年に大幅に改定された松田正隆さんの初期作を、稽古会を開いていた藤家さんと南風盛さんに中條さんを加えた3人で上演。タイトルは三好達治の詩からつけられたとか。

舞台は4方向に客席。大小の箱馬が積み重ねられ、テーブルや箪笥に見立てられる(テーブルには雲形の天板)。
登場人物は一組の夫婦のみ。やりとりは夕食時の他愛ないものながら(ソースではなく醤油が用意されていたりコロッケに輪ゴムが入っていたり)、近づく台風、停電による暗闇のためか、普段は触れないでいるような過去も明らかになる。
どうやら男は女の姉と結婚していたか恋人だったかで、妹である女と浮気していたらしい。姉が踏切の事故で亡くなった後、2人は結婚したのだが、女は姉が自分たちの関係を知っていたと聞いて自分のせいで死んだのではないかと悔やむ。
物語の大半が暗闇、あるいはローソクのほのかな灯りのもとで展開されるため、役者の力量が問われる作品となっているが、藤家さんも南風盛さんも微妙なバランスの上で成り立っている関係性をしかと表していた。
ただ一点、スーツの扱い方がぞんざいなのが気になる。これは他の作品でもよく見かけるのだけど、演劇関係者に毎日スーツを着て出勤した経験がある人が少ないせいだろうか。