シニフィエ『ひとえに』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

シニフィエ
『ひとえに』

2024年1月13日(土)〜21日(日)
こまばアゴラ劇場

戯曲・演出:小野晃太朗
照明:井坂浩 音響:櫻内憧海、江田健太郎
舞台技術協力:菅原有紗(ステージワークURAK)
記録写真撮影:佐藤令奈
宣伝美術:トモカネアヤカ
制作:大蔵麻月 いっしょに考える人:松岡大貴
 
出演:
金定和紗(学生・思恵)
新田佑梨(思恵の友人・とまり/工務店の殺し屋・施工)
桂川明日哥(団体副代表・林/アンダー(代役専門)/記者/警官/誰か)
福原由加里(団体代表・都/医師(思恵の担当医)/とまりの母・依子/先輩(四月一日の先輩))
池田海人(活動家・肖像/政治家・四月一日/警官/男/記者/帽子)

STORY
思恵と友達のとまりは、映画や文学を通して議論を深める勉強会に参加し、自分の言葉を手に入れようとしていたが、ある事件を境に衝突してしまう。悪意とともに受けたダメージはその人を蝕み、状況は刻一刻と悪化していく。展望のない政治家、疲弊した活動家たち、手段として暗躍する人々。それぞれの加害と被害の記憶は現在と過去を往復し、力について考察する。抵抗する人々の戦いの物語。【当日パンフレットより】

小野晃太朗さんによる個人ユニット・シニフィエの新作公演。小野さんの作品はこれまで3本観ているが、シニフィエとしては初めて。

客席は対面式。中央にラグが斜めに敷かれ、通常の下手側にハンガーラック、上手側に帽子掛け。その他、木製の折りたたみ椅子が10脚あり、場面によって配置変え。

本作の登場人物たちに倣って言葉について考えてみたのだが、残念ながら、彼らの言葉は私には届いてこなかった。物理的な距離は近いが気持の上では遠く隔たったものを感じていた。
過去3作においても感じていたことだが、小野さんの書く台詞は自然さを排除し、かなり生硬である。今回、上演台本も購入して読んだが(開始数ページで誤変換やら明らかな話者違いがあるのは売り物としてどうなんだ…)、もしこの台詞でやるのなら、もう少し伝える工夫が必要だろう(そもそも伝えようとしていないのかもしれないが)。その点、今井朋彦さんが演出した『ねー』は演出が戯曲の持つ魅力を最大限に発揮していたが、今回は対面式の客席にした効果も感じられず、とにもかくにも平板で惹きつけるものがなかった。
最後、帽子を被った男が電車に乗っていて、この男が小田急や京王の車内で起きたような事件を起こすのではないかと予感させながら、思恵ととまりの会話で終わっていくのはなかなかよかった。

上演時間2時間5分。