第19回AAF戯曲賞受賞記念公演『ねー』 | 新・法水堂

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第19回AAF戯曲賞受賞記念公演

『ねー』



2021年11月21日(日)〜23日(火・祝)
愛知県芸術劇場小ホール

戯曲:小野晃太朗 演出:今井朋彦
ドラマトゥルク:守山真利恵 セノグラフィー:佐々木文美
衣装:佐々木文美、桑原史香
映像:田中博之 照明:富山貴之 音響:堀場眼助
演出助手:寺島久美子 舞台監督:加藤元基
愛知県芸術劇場 舞台技術:世古口善徳、築山竜次
制作補助:今井絢子、大島直子 プロデューサー:山本麦子

出演:
舟久保汐花(寧)
田辺泰信(父神/弁護士/医者/真の思兼)
内田淳子[ユマニテ](母神/四王の一人・脱獄王)
猪股俊明[レトル](先生)
鈴木正也[libido:](教室の生徒・心)
小林風花[MAパブリッシング](教室の生徒・紋白)
鈴木望生(教室の生徒・花)
新田和也(水掛男/元教室の生徒・兜)
竹内蓮[劇団スポーツ](水掛男/元教室の生徒・鍬形)
今榮敬子(四王の一人・発明王)
小林玉季(四王の一人・剽窃王)
永井茉梨奈(四王の一人・雑学王)
石倉来輝(性犯罪者ハンター・虫)
和田華子[青年団](藁)
宮下泰幸(政治的秘密結社話し合い構成員・麒麟/私刑団ハートブレイカーズ構成員・左心室/警官)
八木光太郎(政治的秘密結社話し合い構成員・榊/私刑団ハートブレイカーズ構成員・左心房/警官)
吉田卓央(政治的秘密結社話し合い構成員・岩戸/私刑団ハートブレイカーズ構成員・右心室/警官/宿屋)
菅沼翔也[ホーボーズ](政治的秘密結社話し合い構成員・思兼/私刑団ハートブレイカーズ構成員・右心房/警官)

STORY
ある日、寧は2人組の水掛男に襲われる。両親(父神・母神)は戸惑い、傷ついた寧は山の上の先生のもとで心、紋白、花らと共同生活を送ることになる。父神は犯人を探してもらおうと藁に連絡を取り、性犯罪者専門ハンターの虫を紹介してもらう。一方、政治的秘密結社話し合いの構成員たちは心に話し合いに参加するよう近づいてくる。

第19回AAF戯曲賞受賞作を今井朋彦さんが演出。

舞台中央に円柱。円柱から下手半分はカーテンに覆われ、上手側は上半分のみ延びていてスクリーンとして使用。入口を挟んで上手側は曲線を描く壁沿いにやはりカーテン。
下手手前の床は段差があり、水面が投写される。そこは主に寧一家の家となり、白いテーブルや椅子が置かれた上手側は先生の教室となる。

今井朋彦さんの出演舞台はいくつか観ているが、演出作品は初めて。公開されている戯曲の最初の方だけ読んだ感じではちょっと小難しいのかなという印象も受けたが、理想的な演出がなされていたと言ってもいいほどの出来栄えだった。
まず劇場空間をうまく使っていて、蛍光灯やサイドの2階部分などはもとより、最後は床を動かしてテーブルなどを寄せ集め、巨大な掘りごたつのようなものが出現。
下手側のカーテンには雨や海岸や平原といった風景が映し出される他、上手側のスクリーンには台詞やズーム画面(秘密結社話し合いの面々)、どアップになった目などが映し出されるなど、映像の使い方も効果的だった。

本作の着想は、とあるレイプ事件を告発した匿名のアカウントを不特定多数のこれまた匿名の人々が叩き、結局告発者は泣き寝入りすることになった一件にあったそうだけど、基本的には匿名でこの作品を観ている我々も当事者であり、決して他人事ではないのだと突きつけられたような気分であった。

配信も予定されているそうなので遠方の方も是非。

上演時間2時間20分。