シス・カンパニー『シラの恋文』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

シス・カンパニー公演

『シラの恋文』



【東京公演】
2024年1月7日(日)〜28日(日)
日本青年館ホール

作:北村想 演出:寺十吾
美術:松井るみ 照明:服部基
衣装:前田文子 音楽:坂本弘道
音響:岩野直人 映像:ムーチョ村松
ヘアメイク:宮内宏明
ステージング:小野寺修二
舞台監督:芳谷研
プロデューサー:北村明子

出演:
草彅剛(鐘谷志羅)
大原櫻子(野浦小夜)
段田安則(院長・伊藤湯之助)
鈴木浩介(医師、牧師・市ヶ谷忠世)
西尾まり(看護師・橋場栄子)
工藤阿須加(利用者、作家志望・青山良平)
田山涼成(同・真金次郎)
明星真由美(同・菊地百恵)
中井千聖(同・小野寺美紀)
宮下雄也(同、落語家・信玄亭万蔵)

ナレーション:高橋克実

STORY
ときにグレゴリオ暦2035年のこと。ある晴れた日、一人の男がテンガロンハットと古めかしい旅行鞄を手に坂道を上ってやって来た。彼の名は鐘谷志羅。はるか海を見わたす呉念坂(俗称五年坂)の高台に建つのは、結核療養者たちが暮らすサナトリウムだ。院長の伊藤湯之助、医師で牧師でもある副院長の市ヶ谷忠世が"新参"の療養者である志羅を迎え入れる。ここでは様々な事情を抱えた利用者たちが日々を送っていた。古株の真金次郎と作家志望の青山良平は畑仕事に汗を流し、落語家の信玄亭万歳は「輪廻の恋」理論とやらを唱え、ふらりと現れた菊池百恵はどうやら手相を観るらしい。看護師の橋場栄子は時々畑で"息抜き"をしている。友人の小野寺美紀と共に志羅の前に姿を見せたのは、最近サナトリウムにやって来た野浦小夜だ。志羅と小夜は目が合った瞬間、しばらく固まってしまう。これは運命の出会いというものだろうかー。【公式パンフレットより】

『シラノ・ド・ベルジュラック』に着想を得た北村想さん&寺十吾さんコンビ最新作。

舞台には3つの高さに分かれ、いちばん奥の下手に一本の木。背景には山。手前の平場には2列の畑が3ヶ所に配置。その他にベンチが3脚。
開演前はエリック・クラプトン「Tears in Heaven」や高木ブー「GOOD!〜Hawaiian Version〜」が流れる。

サナトリウムが舞台ということもあってか、少し昔の話のような雰囲気だが、時代設定は2035年。
そこへ青森出身でゴーストライターをしている志羅がやってくるところから物語は始まる。志羅と利用者の一人、25歳の小夜は出会った瞬間、固まったようになる。極めて印象的な出会いのシーンだが、まさかこんなに山田風太郎さんの『甲賀忍法帖』に出てくる弦之介と朧(おぼろ)がフィーチャーされるとは。笑
志羅によれば、子供の頃に見ていたテレビドラマの少女剣士に小夜が似ているらしいのだが、輪廻転生も本作を貫くテーマの一つとなる。最後はディストピア的展開もあるのだが、これまでに観てきた北村想作品の中でもいちばんロマンチックな作品だった。

よく考えたら出演舞台を観るのは初めてだった草彅剛さん(映画『シュート!』の舞台挨拶の警備のバイトをした際にちらっと見たことはあり。笑)はドラマと変わらず飄々とした佇まいで、ギターの弾き語りもそつなく披露。
大原櫻子さんの歌声も相変わらずよかったし、凛とした剣士姿も様になっていた。
『ブラッシュアップライフ』の加藤でおなじみ宮下雄也さんはまるで別人のようで落語家にしか見えないほどのハマり具合だった。