『ふたつの祖国、ひとつの愛―イ・ジュンソプの妻―』(酒井充子監督) | 新・法水堂

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『ふたつの祖国、ひとつの愛―イ・ジュンソプの妻―』



2014年日本映画 80分
監督:酒井充子
エグゼクティブプロデューサー:菊池笛人、朴炳陽
プロデューサー:小林恒行
日本プロデューサー:辻本隆行
韓国プロデューサー:兪澄子
撮影:松根広隆 音響:菊池信之
同時録音:川上拓也 編集:糟谷富美夫
音楽:廣木光一

出演:山本方子、山本泰成(次男)、金仁浩[キム・インホ/キム・イノ](ジュンソプ一家の友人)、白榮洙[ペク・ヨンス](画家)、田殷子[チョン・ウンジャ](西帰浦李仲燮美術館学芸員)、金順福[キム・スンボク](方子たちが身を寄せた家の大家)、奥野恵子、山本真利子(泰成の妻)、山本凌聖(泰成の息子)
手紙の朗読:速名美佐子(山本方子)、大鷹明良(イ・ジュンソプ)
ナレーション:小林三四郎

STORY
第二次世界大戦のさなか、三井財閥企業の役員を父に持つ令嬢・山本方子(まさこ)は日本の美術学校で出会った朝鮮からの留学生イ・ジュンソプと恋に落ちる。空襲が激化し戦況が最終局面を迎えた1945年、方子は命がけで海を渡り、故郷に戻ったジュンソプのもとへ嫁いでいった。幸せな時を過ごしたのもつかの間、日本の敗戦後に勃発した朝鮮戦争の戦火と貧困に追われ、再び日本と朝鮮の地で離れ離れに。それでもふたりの愛は失われず、唯一の通信手段だった手紙は200通以上に及んだ。アジアの芸術家として初めてニューヨーク近代美術館〈MoMA〉に作品が収蔵され、遺された絵画は今や億の値がつく画家、イ・ジュンソプ。韓国では知らない者はいないジュンソプは、生前キャンバスも買えないほど貧しく、39歳で息を引き取った。彼が最後に会いたいと願ったのは、日本人の妻・方子だった。【公式サイトより】

韓国の国民的画家イ・ジュンソプさんの妻・山本方子さんにスポットを当てたドキュメンタリー。

6月にイ・ジュンソプさんの半生を描いた劇団文化座『旅立つ家族』を観て以来、気になっていた作品なのだけど、イ・ジュンソプさんが「動」とすると、山本方子さんは「静」。冒頭と最後に方子さんが美容院に行くシーンがあるが、歩行器を使って歩いている姿はどこにでもいる、けれどちょっと上品なおばあちゃんという印象。とてもじゃないが、戦争中に朝鮮に渡り、結婚し、その後、離れ離れになり……といった波乱の生涯を送ってきたとは想像もつかない。
全体的にあっさりしていて80分では物足りなさも残ったが、それは舞台を観た後というせいもあるかもしれない。イ・ジュンソプさんの手紙の「私のすばらしい最愛の一等大事な君へ」といった熱烈な文言が微笑ましかった。