青年団『日本文学盛衰史』 | 新・法水堂

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青年団第96回公演

『日本文学盛衰史』



【東京公演】 
2023年1月13日(金)〜 30日(月)
吉祥寺シアター

原作:高橋源一郎 作・演出:平田オリザ
舞台美術:杉山至
舞台美術アシスタント:濱崎賢二
舞台監督:武吉浩二(campana)
照明:西本彩、三嶋聖子 音響:泉田雄太
衣裳:正金彩 衣裳製作:中原明子
衣裳アシスタント:陳彦君、塚本かな、原田つむぎ
演出部:原田香純、たむらみずほ
小道具:中村真生 演出助手:小原花
アンダースタディ:和田華子
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子、太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:太田久美子、金澤昭、赤刎千久子、込江芳
制作補佐:三浦雨林
タイトルロゴ制作資料協力:公益財団法人日本近代文学館
協力:㈱アレス

出演:
山内健司(森鷗外)
大竹直(島崎藤村)
島田曜蔵(田山花袋)
永井秀樹(二葉亭四迷(本名 長谷川辰之助)/島村抱月)
兵藤公美(夏目漱石/宮沢賢治)
能島瑞穂(透谷の妻・北村ミナ/子規の妹・律/四迷の母・長谷川しず/夏目鏡子)
井上みなみ(中江兆民/陸掲南/池辺三山/坪内逍遥)
小林智(大矢正夫/伊藤左千夫/北原白秋)
髙橋智子(正岡子規/菅野スガ子/伊藤野枝)
山本裕子(国木田独歩/若山牧水)
海津忠(星野天知/河東碧梧桐/高橋源一郎)
菊池佳南(星良(後の相馬黒光))
串尾一輝(幸徳秋水/森田草平)
田崎小春(樋口一葉/永井荷風)
知念史麻(高浜虚子/高村光太郎)
井上三奈子(小手川弥生子(後の野上弥生子))
長野海(石川啄木/芥川龍之介)
村田牧子(与謝野晶子)
村井まどか(佐藤さん/太宰治)
佐藤滋(田中さん/坂口安吾)
中藤奨(鈴木さん/織田作之助)
緑川史絵(女中A/四迷の妻・長谷川りう/川端康成)
松田弘子(女中B/子規の母・八重/志賀直哉)
石橋亜希子(女中C/平塚らいてう) 

STORY
文学とは何か、人はなぜ文学を欲するのか、人には内面というものがあるらしい。そして、それは言葉によって表現ができるものらしい。しかし、私たちは、まだ、その言葉を持っていない。この舞台は、そのことに気がついてしまった明治の若者たちの蒼い恍惚と苦悩を描く青春群像劇である。【公式サイトより】

2018年初演、第22回鶴屋南北戯曲賞受賞作の再演(初演の記事はこちら)。

舞台は初演を踏襲。広い畳敷きの部屋に4列お盆が並べられ、部屋の向こう側に廊下。障子を開けると中庭が見える。下手が玄関並びに台所、上手が通夜が営まれている部屋へと通じる。

北村透谷(1894年(明治27年)5月)、正岡子規(1902年(明治35年)9月)、二葉亭四迷(1909年(明治42年)6月)、夏目漱石(1916年(大正4年)12月)と4人の文学者の葬儀を通じて、明治・大正、更には昭和から平成へと続く文学の歴史を描く。
初演も原作のスピリットに則って時事ネタを織り込んでいたが、本作では幸徳秋水と菅野スガ子によるミルクボーイやら汚リンピック(あの会社の名前は出さないで!)、そしてもちろん?コロナ禍など、この4年あまりの出来事がネタにされている。
その中でもゾクッとしたのが、初演でも印象に残った三場の漱石の演説の中で、漱石が相馬黒光を椅子に座らせて芸術のあるべき姿を語るシーン。これは言うまでもなく、あいちトリエンナーレ2019において物議を醸した《平和の少女像》のことで、平田オリザさんの創作者としての矜持を感じた。
日露戦争の話題が出てくると、現在のウクライナをめぐる状況が頭をよぎってしまうのも初演からの悲しい変化ですな…。

改めて青年団の俳優陣の素晴らしさを実感したが、中でも透谷の妻・北村ミナ、子規の妹・律、四迷の母・長谷川しず、そして夏目鏡子と4場通して遺族を演じた能島瑞穂さんが特によかった。
また、体調不良のため降板となった古屋隆之さんの代役を井上みなみさんが務め、初演で志賀廣太郎さんが演じた中江兆民、陸羯南、池辺三山、坪内逍遙の4役をキュートに演じていた。

上演時間2時間17分。

上演後に平田オリザさんによるポストパフォーマンストークあり。新刊『名著入門』も購入しましたよ。