『バグダッド・カフェ[ニュー・ディレクターズ・カット版]』(パーシー・アドロン監督) | 新・法水堂

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『バグダッド・カフェ[ニュー・ディレクターズ・カット版]

OUT OF Rosenheim

 

 
1987年西ドイツ=アメリカ映画 108分
脚本・監督・製作:パーシー・アドロン
脚本・製作:エレオノーレ・アドロン
撮影監督:ベルント・ハインル
編集:ノルベルト・ヘルツナー
音響:ハイコ・ヒンデルクス
美術:ベルント・アマデウス・カプラ
衣裳:レジーネ・バッツ、エリザベステン・ウォーナー
メイクアップ・タトゥー:リズベス・ウィリアムソン
音楽:ボブ・テルソン
主題歌:「コーリング・ユー」ジルヴェッタ・スティール
日本語字幕:戸田奈津子
 
出演:
マリアンネ・ゼーゲブレヒト(ジャスミン・ミュンヒシュテットナー)
CCH・パウンダー(ブレンダ)
ジャック・パランス(ルディ・コックス)
クリスティーネ・カウフマン(刺青師デビー)
モニカ・カローン(ブレンダの娘フィリス)
ダロン・フラッグ(ブレンダの息子サル・ジュニア)
ジョージ・アキラー(カフェ従業員カヘンガ)
G・スモーキー・キャンベル(ブレンダの夫サル)
ハンス・シュタードルバウアー(ジャスミンの夫ミュンヒシュテットナー氏)
アラン・S・クレイグ(ブーメランの若者エリック)
アペサナクワット(保安官アーニー)
ロナルド・リー・ジャーヴィス(運転手ロン)、マーク・ダネリ(運転手マーク)、レイ・ヤング(運転手レイ)、ゲイリー・リー・デイヴィス(運転手ゲイリー)、ベイビー・アシュリー(サル・ジュニアの子供)
 
STORY
ミュンヘン郊外の田舎町、ローゼンハイムから観光旅行にやってきたミュンヒシュテットナー夫妻は、ディズニーランドからラスヴェガスの道中で夫婦喧嘩になってしまい、夫と別れ車を降りたジャスミンは、重いトランクを提げてあてどもなく歩き出した。やっとの思いでたどりついた、さびれたモーテル兼カフェ兼ガソリンスタンド“バグダッド・カフェ”で部屋を借りようとするジャスミンに、女主人のブレンダは不機嫌な迷惑そうな表情を隠そうとしない。いつも昼寝ばかりしているバーテン・カヘンガ、自分の赤ん坊の面倒も見ずに一日中ピアノばかり弾いているサル・ジュニア、はねっかえり娘のフィリス達に始終腹を立てているブレンダは、たった今ノロマな亭主サルを追い出したばかりだったのだ。トラック野郎相手の刺青師デビー、ハリウッドから流れてきたカウボーイ気取りの画家ルディ、そしてヒッチハイカーのエリックと、客も奇妙なのばかり……。やがてブレンダは、この薄気味悪い大女ジャスミンを追いだそうと躍起になるが、彼女の怒りが爆発するのは、ブレンダの留守中にジャスミンがモーテルの大掃除をしてしまったこと。しかしその頃から、サル・ジュニアとフィリスがいつしか失くしていた包容力を求め、ジャスミンの部屋をしばしば訪ね、また彼女の柔和な人柄と笑顔に魅かれたルディは、絵のモデルに、とジャスミンを口説き始める。そしてブレンダは、ある朝カフェの客相手に手品を披露し始めたジャスミン目当てに客が“バグダッド・カフェ”にやって来るのに、次第に表情をやわらげてゆくのだった。しかし、すっかりカフェの一員となったジャスミンに、保安官は、ビザの期限切れと、労働許可証の不所持を理由に、西ドイツへの帰国を命じるのだった。数カ月後、ジャスミンは“バグダッド・カフェ”に戻ってきた。歓喜で彼女を温かく迎えるブレンダたち。そしてそんなジャスミンに、ルディはプロポーズする。【「KINENOTE」より】

日本では1989年に公開されてヒットした作品のニュー・ディレクターズ・カット版。オリジナル版から17分の未公開カットが追加され、監督がすべてのカットの色と構図を調整したとのこと。
 
数十年ぶりの鑑賞。
主題歌「コーリング・ユー」の印象が強すぎて中身はほとんど覚えていなかったけど、気怠い雰囲気の中に人種も性別も年齢も超えた結びつきがあって非常に心地いい。
主題歌の歌詞にも出てくる壊れたコーヒーマシーンはこの町の象徴。周りに何もなく、時が止まってしまったかのようだが、ジャスミンはここを訪れたことで自分を取り戻し、傷ついた心を癒やしていく。最初は夫や子供たちに対しても口やかましく、ジャスミンにも敵対的な態度を見せていたブレンダが次第に穏やかさを取り戻していくのもとてもいい。
最後の手品ショーのくだりもみんなが幸せそうで、ここは一種のユートピアとさえ思えてきた(今更だけど、バグダッドはイラクの首都のバグダッドにあらず)。

今回、ドイツでの原題はOut of Rosenheimだと知ってびっくり(Bagdad Cafeは英題)。Out of Africa(愛と哀しみの果て)のパロディだったらしい。