青年団若手自主企画 山中企画『転校生』 | 新・法水堂

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青年団若手自主企画vol.89 山中企画

『転校生』



作:平田オリザ 構成:山中志歩 演出:石渡愛
舞台監督:黒澤多生 演出助手:安齋彩音 音響・照明:櫻内憧海
衣装:金定和沙 宣伝美術:松橋和也 制作:太田久美子、寺垣沙織

出演:
黒澤多生*(秋山美和子)
西風生子*(上田順子)
日和下駄[円盤に乗る派](転校生・大西由美)
根本江理(木下秀子)
西山真来(鈴木真由美)
川隅奈保子*(寺岡理恵子)
石渡愛*(野本小百合)
山中志歩*(堀田早苗)
五島ケンノ介(町田ミナ)
イム・セリュン(向井京子)
*青年団

STORY
いつもと変わらない、ある高校の教室の朝。そこへ、「朝起きたらこの学校の生徒になっていた」と言う転校生がやってくる。高校生たちの日常、生活。生きること、死ぬことへの疑問。転校生を受け入れながら、身近な出来事を通して、この世の不条理を描き出す群像劇。【公式サイトより】

山中志歩さんが平田オリザさんの『転校生』を再構成し、10人の老若男女のキャストで上演。
演出は当初、柳生二千翔さんだったが体調不良のため降板し、石渡愛さんに交替。それに伴い、坊薗初菜さんも降板し、代わりに根本江理さんが出演。

舞台にはバラバラに置かれた学校の椅子。左側の黒い壁に黒い枠組が取りつけられて窓を表し、その下の壁沿いに各生徒用の棚。

本作は本広克行さん演出による女子校版男子校版を配信で見ているが、元々は21人の女子高生が登場する戯曲。それを登場人物を半分以下にしてどうなるかと思ったけど、ちゃんと『転校生』になっていた。
一つには本作がいわゆる「静かな演劇」の代表格で、大きな事件が起きるわけではないので、転校生が来るという一点だけ抑えておけば、いかようにもアレンジが可能だから出来たことであろう。今後、本作が上演される折には、生徒たちが調べる事柄もアップトゥデイトするのもありだと思う。

キャスト陣の貢献も光る。
ゆうめい作品でもお馴染み、五島ケンノ介さんは多少浮いてはいたが、全体で見ると大きな違和感がない不思議。こういった性別も年齢もバラバラなキャストでやってもびくともしない強さがこの戯曲にはあるということでもあろう。
韓国のイム・セリュンさんが新型コロナの影響でリモート出演になったのも怪我の功名で、面白い効果を生み出していた(通信トラブルがあったらどうするんだろう…とヒヤヒヤもするが)。

上演時間1時間11分。