PARCO Produce
『転校生』女子校版
2019年 紀伊國屋ホール 1時間12分
作:平田オリザ 演出:本広克行
美術:久保田悠人 衣裳:新崎みのり 照明:佐藤啓 音響:鹿野英之
演出助手:大久保遼 舞台監督:本田和男 制作:三宅彰、山口萌
プロデューサー:毛利美咲 製作:井上肇
出演:
愛わなび(眼鏡、かなこに本貸す、「世界の高校生」班)
天野はな(転校生)
上野鈴華
小熊綸(親ができちゃった結婚)
金井美樹
川﨑珠莉(「世界の高校生・中国」)
川嶋由莉(高木先生が好き、解剖好き)
齋藤かなこ(麩菓子、課題図書『それから』、ロングヘア)
榊原有那(姉が出産、義兄が浮気?)
指出瑞貴(華道部、「アメリカの高校における銃乱射事件」)
里内伽奈(課題図書『変身』、「フランスの高校生・イスラム教徒」)
澤田美紀
田中真由(入試の時、屋上で高層ビル眺める)
西村美紗(北高サッカー部の練習を見に行く)
根矢涼香(なしこの友人、格闘技オタク)
羽瀬川なぎ(クラス委員)
廣瀬詩映莉(課題図書『風の又三郎』、「世界の高校生・アルゼンチン」、写真の専門学校)
藤谷理子(転校予定、「世界の高校生・南アフリカ」)
星野梨華(勉強できる)
増澤璃凜子
桃月なしこ(涼香の友人、課題図書『カラマーゾフの兄弟』)
STORY
ある高校の教室。普段と変わりない1日の始まり。他愛のない日常の会話。そこへ、「朝起きたらこの学校の生徒になっていた」と言う、転校生がやってくる。身近で起きている出来事をとおして、人間の存在の不確かさが浮かび上がる21名の群像劇。【公式サイトより】
PARCO劇場による《PARCO STAGE@ONLINE》第1弾。
舞台上には一段高くなったところに机と椅子が並べられ、開演すると生徒たちが続々と入ってくる(開場時には生徒たちがロビーにいてお客さん対応をしていた)。
平田オリザさんらしく、同時平行で会話が続けられる。21人の生徒みんなが仲いいわけあるかいなとも思いつつ(終盤でそれははなが転校してきたせいかも、と理子が分析する)、わちゃわちゃしつつも華やかな雰囲気が女子校らしさを醸し出す。
入退場する際に何人かが端で立ち止まり、足並みを揃えるのも面白い演出だが、実際の女子高生たちも教室という空間の中では演技をしているのかもと思わせる。
高木先生のことが好きだった由莉が「花の命は短い」と言う台詞があるが、この時代にしかできないことは確実にある。『少女邂逅』にも相通じるテーマだが(カフカ『変身』繋がりかつ根矢涼香さん繋がりでもある)、少女はいつまでも少女ではいられない。
生徒たちは、世界の高校生のことを調べていくうちに自分たちがどうして生まれたのか(howではなくwhyの意味で)を考察していくようになる。なぜこの時代に日本に生まれ、この学校の、このクラスの生徒となったのか。図らずも黒人差別の話題も出てくるが、「生まれることの不条理」に直面しつつも彼女たちは成長していく。
もうこのキャストが揃って再演することはないと思うと一抹の寂しさがありつつも、それぞれが「21世紀に羽ばたく女優」になってくれることを願うばかり。
藤谷理子さん目当てで観たいなーと思いつつ、見逃していた作品だったので、今回の配信はありがたい。結構メインな役どころだったし、生で観たかったところだけど。特に終盤、はなとのシーンで、一人ひとり、机を触りながら名前を呼んでいくところは実に切ない。
その藤谷さんも出ていた『ドロステのはてで僕ら』 の山口淳太監督が映像撮影と今回の配信の編集ディレクターを担当していた。