東葛スポーツ『保健所番号13221』 | 新・法水堂

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東葛スポーツ

『保健所番号13221』

 

 

2022年2月23日(水・祝)~27日(日)

シアター1010稽古場1

 

構成:金山寿甲

舞台監督:湯山千景 音響監修:おにぎり海人

制作:小西猪


出演:

塚本直毅[ラブレターズ](男・劇作家/三島由紀夫/ワクチン接種を受けに来た人)

菊池明明[ナイロン100℃](劇作家の妻/藤原の妻/伝説の女優・はるか)

名古屋愛[青年団/青春五月党](駅のアナウンス/専属ドライバー/伝説の女優の娘/ワクチン接種会場係員)

神谷圭介[テニスコート](元ラーメンズ・小林/ベルベルジン・藤原/PARCO劇場関係者/博報堂広報・神谷/長嶋茂雄/医師/糸井重里)

xiangyu(藤原の引きこもりの娘/MISIA/ワクチン接種を受けに来た人)


STORY

劇作家の男は次回公演のチケットが既に売り出されているにもかかわらず、どんな作品にするのか決めかねていた。男は『ドライブ・マイ・カー』や『小説8050』をネタにしたり、『金閣寺』をPARCO劇場を舞台に翻案した作品を思いつくが、妻からはダメ出しを食らう。そんな中、男は新型コロナウイルス感染症に罹患してしまう。


金山寿甲さんが新型コロナウイルスに感染したため、昨年8月に予定されていた『イーストサイド物語』が中止となってしまった東葛スポーツの新作公演。


舞台中央にスロット台。後方にテレビ、衣裳だんす、黒電話。奥にはいつものようにスクリーンがあり、客入れ中は1964年の東京オリンピックの映像が流れる。


開演すると、京成電鉄の金町線の先頭車両から見た映像で終点の金町駅まで。

金山さんが歌った後、菊池明明さんによる前説。ここはいつもなら川﨑麻里子さんの担当パートだけど(衣裳も同じスワローズのスタジャン)、ほりぶん『かたとき』と丸かぶりだからなぁ…。

スロットに興じる男の役は元自民党の白須賀氏にやって欲しかったそうで、白須賀氏は金山さんとは小・中学校の同級生で、議員になってからも実家のパチンコ屋によくスロットをやりに来ていたとか。

ちなみに9月の次回公演はミン・ジン・リーさんの『パチンコ』 をネタにするらしい。鄭義信さんにやられる前に…。笑(原作はまだ読んでないそうな)


本篇は金山さんの分身と思しき男と妻の物語になり、岸田國士戯曲賞の劇評もネタにしつつ(「言葉遊びが服着ているような人に言葉遊びを褒められた」とか)、次回作の構想が描かれていく。「この世で最も美しい演劇」を見せてくれるPARCO劇場ネタでは、世界のケン・ワタナベを「足し算によってのみ構成される演技」と絶賛。笑

全篇を通じて感じるのは、唯一無二のヒップホップ演劇の作り手としての矜持。そして家族や地元・葛飾区金町に対する愛。その思いに目頭が熱くなる。

最後の各出演者による自己紹介ラップもいいのよね。


本作も岸田戯曲賞の最終候補に残らないかなぁ。笑


上演時間1時間25分。