阿佐ヶ谷スパイダース『老いと建築』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

阿佐ヶ谷スパイダース

『老いと建築』



【東京公演】

2021年11月7日(日)〜15日(月)

吉祥寺シアター


作・演出:長塚圭史

舞台監督:足立充章、垣内美穂

美術:片平圭衣子

照明:横原由祐 照明協力:齋藤茂男

音響:島猛

衣裳:柿野彩 ヘアメイク:河村陽子

大道具:鈴木太朗(箱馬倶楽部工房)、唐崎修

演出助手:山田美紀

照明部:天野瑞菜 音響部:松丸恵美

演出部:桂川裕行 衣裳部:佐々木梓

劇団制作:下村はるか、梶原千晶、福沢諭志、城野淳子、内藤ゆき

票券・制作協力:熊谷由子

宣伝美術:唐崎修 Web:伊達暁 


出演:
村岡希美(わたし)
志甫まゆ子(長女・仁子(にこ))
藤間爽子(仁子の娘・喜子)
坂本慶介(仁子の息子・基督(のりすけ))
富岡晃一郎(仁子の兄、編集者・一郎)
木村美月(一郎の恋人、作家の卵・りぼん(本名・結子))
中村まこと(あなた)
李千鶴(夫の愛人・今津美智子)
森一生(介護士・朝岡)
長塚圭史(仁子の夫、レストラン経営・英二)
伊達暁(建築家)

STORY
高齢ゆえにバリアフリー化を余儀なくされる家。独り住む老婆は美意識を損なう老いを受け入れることが出来ない。娘や息子はさらにその先の改装・改築を考える。老婆は彼らにこの家を渡したくはない。同居の甘言を囁く子供達孫達と、歳を重ねるごとに性格が激しく歪む老婆との応酬。さらにこの家を設計した建築家、既に先立った夫の幻影と思い出が現実と入り混じり、ますます老婆の言動は乱れゆく。【公式サイトより】

劇団への書き下ろしとしては『MAKOTO』以来3年ぶりとなる阿佐ヶ谷スパイダース新作公演。

昨年12月から今年5月まで開催された『謳う建築』展での建築家・能作文徳さんとのコラボレーションをきっかけにして作られたという本作。
舞台には太い柱が4本と細くて丸い柱が数本。中央には円形のテーブルがあり、椅子が5脚ほど。開演すぐに天井から葉っぱ(に模したもの)が降ってきて、「わたし」はそこを中庭だと思っているが、定かではない。

主人公の老婆には名前がなく、役名は「わたし」。つまり、これは小説で言えば一人称の物語ということになる。
もっと言えば本作は「わたし」の頭の中で展開する物語で、登場する人物もそこに本当にいるのかどうかも怪しく、話も現在と過去を行き来しつつ進んでいく。
長塚圭史さんはそんな記憶が混濁する「わたし」の姿を円熟味の増した筆運びで描き出す。「わたし」と自身が演じる娘婿の間に何があったのかが明らかとなる終盤は一段と空気が変わり、惹きつけられた。

主演の村岡希美さんは単なる老け演技にはなっていない深みを感じさせ、夫の「あなた」役の中村まことさんとのシーンは息の合ったところを見せる。
木村美月さんの「りぼんだよ」も最高。

上演時間2時間14分。