フェスティバル/トーキョー『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』(シアターイースト)【配信】 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

フェスティバル/トーキョー17

『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』

In our distance, there is no sorrow.



2017年10月7日(土)~15日(日)

東京芸術劇場シアターイースト

 

作・演出:柴幸男

演出助手:きまたまき 舞台監督:高橋淳一、山下翼
舞台美術:青木拓也 舞台美術補佐:濱崎賢二

音楽:柯智豪-Blaire KO- 音響:星野大輔(サウンドウィーズ)

音響操作:反町瑞穂(Sound Sugar) 音響補佐:大矢紗瑛

照明:筆谷亮也 照明操作:しもだめぐみ、三嶋聖子

映像:鹿野護(WOW/未来派図画工作)、曽根宏暢(東北工業大学)、稲垣拓也(WOW)、齋藤勇樹(WOW) 映像テクニカル:須藤崇規 映像操作:三上亮、樋口勇輝、伊藤優里

衣裳:TRAN泉 衣裳コーディネーター:林秉豪-Keith LIN-
空間構成[エントランス]:安藤僚子(デザインムジカ)
宣伝写真:Ivy Chen、濱田英明 宣伝写真ヘアメイク:鷲塚明寿美

宣伝美術:原田祐馬(UMA/design farm) 記録:陳冠宇-Kuan-Yu CHEN-
字幕翻訳:クリス・グレゴリー 字幕翻訳監修:水谷八也 広報協力:ポーラ美術館

 

出演:

森岡光[不思議少年](東子)

藤谷理子(西子)

端田新菜[ままごと│青年団](異国からの旅行者)

大石将弘[ままごと│ナイロン100℃](鬼火)
岡田智代(東子の母親)
小山薫子(東子の息子・トウヤ)
串尾一輝[青年団](郵便屋/タクシー運転手ほか)
鈴木正也(東子の恋人/旅行者の息子)

椿真由美[青年座](東子のクラスメイト/車椅子の東子)
野上絹代[FAIFAI│三月企画](新幹線の乗客/旅行者の友人)

STORY

隣の病室で生まれ、家も隣同士だった東子(トウコ)と西子(セイコ)。いつも東子の隣には西子がいたが、小学校3年生のある夜、西子は隣町へと引っ越していく。高校生になり、西子から更に西の町へと引っ越すことを知らせる絵ハガキが届く。その町で大きな地震が起き、西子のことが心配になった東子は手紙を書こうとするが、何を書けばいいか分からないまま月日が過ぎていく。やがて東子は大学生になり、新幹線に乗って生まれ育った町を出ていく。その日、西子から電話があり、今は西の国にいることを知らされる。


2017年、東京芸術劇場のシアターイーストとシアターウエストで同時上演された作品のシアターイースト版を配信にて。

この作品、私はシアターウエスト版のみ観ていたので(しかも収録された10月9日)、隣の劇場ではこういうことが起きていたのかと4年越しに知ることができた。


交通網やインターネットの発達により物理的にも精神的にも「世界がだんだん小さくなっている」とよく言われる。国内外を問わず、災害やテロ、内戦といった多くの命が犠牲となったという報せも瞬く間に世界中に広まっていく。

私たちは当事者でもない限り、そうしたニュースに接して心を痛めはするものの、1週間もすればあまり気にも留めなくなってしまう。

私自身、2000年に東海豪雨の被害に遭ったときに他の地域に住む友人たちとの温度差を実感したが、これはもういくら地球が小さくなろうがこの隔たりというのは仕方ないことなのだと思う。


本作の主人公・東子は、小学生の頃は隣のクラスのウサギが死んで涙を流していたのが、いつしか遠くの町、遠くの国で起きた出来事に西子が巻き込まれたかもしれないと思いつつも自分の生活を優先させるようになっていく。

当然のことながら、すべての事件・事故・災害の犠牲者に思いを馳せることは難しい。かと言ってタイトル通り、「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」では少し悲しい。だとすればせめて隣の人、隣の町、隣の国を大切にすること、それが繋がって世界全体を覆っていき、少しでも世界がマシなものになるのではないか。柴さんはそんな願いをこの作品に込めているように感じた(特にみんなで生まれてきた赤ん坊をあやすラスト)。

 

配信時間1時間17分。