新宿梁山泊『ベンガルの虎』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

新宿梁山泊 第70回公演

『ベンガルの虎』

 

 

2021年6月12日(土)~23日(水)

新宿・花園神社境内 特設紫テント

 

作:唐十郎 演出:金守珍

照明:髙瀬勇佑+ライズ 照明操作:宮崎絵美子 舞台美術:大塚聡+百八竜

音響:大貫誉 劇中歌作曲:N-TONE 舞台監督:広島光

振付:大川妙子 殺陣:佐藤正行 宣伝美術:宇野亞喜良、福田真一

撮影:大須賀博 制作協力:野口和美 制作部/受付協力:椿紅鼓、蜂谷眞未

 

出演(一部の配役は日替わり):

風間杜夫(隊長 俗物博士/村岡)

金守珍(産婆のお市(おこそ頭巾の婆ァ))

水嶋カンナ(水島カンナ)

宮原奨伍(水島)
松田洋治(腹心(印肉貧相)/井上)
島本和人(片腕(天地震動)/書生)

渡会久美子(カンナの母南マサノ)

藤田佳昭(領事/警備員/植木屋)

八代定治(中年男(ミシン売り)/予想屋の将軍/薔薇族のエディター)

松永健資(マネージャー/宮川/薔薇族のカメラマン)

のぐち和美(朝顔売りの婆ァ(お市の従姉))

平山もとかず(流しの兄 左近)

奥山ばらば(白骨の化身・男)

紅日毬子(白骨の化身・女/白痴女)

中嶋海央(カンナの元教え子・水島銀次少年)

えびねひさよ(妻と称す女(女1)/ラシャメン)

柴野航輝(流しの兄弟 右近/兵士/ビルマ僧/町内の人)
二條正士(競輪場の男/兵士/ビルマ僧/町内の人)
中井健勇(兵士/ビルマ僧/町内の人/清掃員)
山﨑雄介(兵士/ビルマ僧/町内の人)
池田竜渦爾(兵士/ビルマ僧/町内の人)
浅尾啓史(兵士/ビルマ僧/町内の人/清掃員)
田中周平(紳士2/インコ/兵士/ビルマ僧/町内の人)

清水美帆子(おトヨ/女2/ホステス/おこそ頭巾の女/ラシャメン/町内の人)
染谷知里(おサト/ホステス/おこそ頭巾の女/ラシャメン/町内の人)

諸治蘭(おツタ/ホステス/おこそ頭巾の女/ラシャメン/町内の人)
本間美彩(ホステス/おこそ頭巾の女/ラシャメン/町内の人)
河西茉祐(ホステス/おこそ頭巾の女/ラシャメン/町内の人)
山田のぞみ(ホステス/おこそ頭巾の女/ラシャメン/町内の人)
佐野実紀(ホステス/おこそ頭巾の女/ラシャメン/町内の人)

STORY
敗戦の色を濃く残す東京の下町。かつて中学校の家庭科教師だったカンナは、今では安キャバレーのホステスをしている。夫の水島は戦地に向かったきり行方不明になっているが、バッタンバンの象牙が入った行李を馬骨印房に送ったという手紙が届く。カンナはその店を何度も訪れるが、いつも留守。ようやく姿を現した店長はかつて水島が所属していた軍隊の隊長だったが、そんな注文は受けておらず、水島は社員として南方にいると言う。カンナはかつての教え子で、現在は流しをしている銀次と出会い、夫の行方を捜し求める。2人の前には24時間、1時間ごとに職業を変える中年男や、おこそ頭巾の女を引き連れた産婆のお市などが立ちはだかる。


新宿梁山泊、記念すべき70回目の公演。

 

本作を鑑賞するのは2011年の豊橋公演以来(出演者の一人、清水美帆子さんは本作を観たことがきっかけで上京し、新宿梁山泊に入ることになったとか)。

三幕構成になっていて、一幕はハンコ屋・馬骨印房の前(下手にトイレ)、二幕は花月園競輪場(トイレは券売所に早変わり)、三幕は入谷朝顔市。
ベースには『ビルマの竪琴』があり、水島がバッタンバンから送ったはずの象牙が入った行李をめぐって様々な人物が交錯する。

 

10年前の上演の詳細までは覚えていないが、水嶋カンナさんと渡会久美子さん以外はキャスト総とっかえ(金さんは別の役で出演)ということもあり、また新たな作品として楽しんだ。特に今回は2列目で鑑賞したこともあって、10年前よりも大いなる熱量を全身に浴び(水や競輪の車券も)、見終わった後は放心状態。

総勢30名の出演者がところ狭しと動き回り(金守珍さんはモブシーンの演出が抜群にうまい)、カンナがプールに飛び込み、ショベルカーのバケット(土などを掬う部分)に乗って夜の闇へと消えていくラストは、テント芝居はこうでなくっちゃと思わずにはいられなかった。

 

初のテント芝居に挑んだ風間杜夫さんは若干、台詞に詰まることもあったが、まったくもって違和感なし。歌も披露され、思わず「銀ちゃん!」と叫んだよね(嘘)。

これが最後の水島カンナ役になると思われる水嶋カンナさんは堂々たる主演っぷり。

『唐版 犬狼都市』に続いての奥山ばらばさんの踊りを至近距離で目の当たりに出来たのも僥倖だったが、紅日毬子さんとの組み合わせが面白い。

同じく『犬狼都市』に続いて出演の宮原奨伍さんもハマり役であった。

 

上演時間2時間50分(一幕1時間3分、休憩10分、二幕50分、休憩10分、三幕37分)。